■絵で威圧するのではなくて、ストーリーや想像で怖がらせる

Q:マンガ部門大賞の「呪いは効くのでしょうか」が選考委員の4人からはとても高評価でした。実際に読んでみても面白く、伊藤先生も「本当におもしろいなぁ」と大絶賛していました。

波津:ノミネート作品の中で、ダントツでした。他の作品は、少し前に流行ったスプラッタホラーみたいな、要はグロい絵で怖がらせる作品だったのですが、「呪いは効くのでしょうか」は一線を画していましたね。背景のパースや人物のデッサンもきちんと描けていましたし。私たちは、応募作品を丁寧に読んでいきます。「こういうことをやりたかったんだな」と、作品に寄り添いながらページをめくりますが、読者は「絵が下手」だと手に取らないで終わってしまうことも多いでしょうね。

伊藤:最終選考会に残ったマンガの作品でも、絵で違和感を抱いたものもあります。人物の身体のバランスがちょっと変だったり。

波津:人物の表情が描けていない作品も。アイデアの面白さと気持ち悪さで、作品を作り上げているんでしょうね。割と皆さん、描く絵が雑かな。漫画の技法を覚えたら、もっといい作品になるものがありますね。ストーリーが面白かったとしても、まず目に入るのは絵ですから。やはり、第1印象が大事なんです。

Q:今回が2回目となった朝日ホラーコミック大賞ですが、前回と「ここが違う!」と感じたことはありましたか?

伊藤:原作部門は、前回よりも発想が面白いのが多かったですね。

波津:出だしで面白い!と思う作品が、結構ありました。逆に大賞の「ストロベリーミルクゴースト」は最初、誰が話しているのかわからなかったので、脚本みたいに書いた方がよかったかなと思います。

■本音を言ってくれる仲間や友人

Q:どうしたらマンガはうまくなるのでしょうか。構成力は大事ですが、身につけるには何が必要だと思いますか? また、第3回はどんな作品を期待しますか?

波津:1人で描いていると多分、次の段階に行けない気がします。知り合いに読んでもらうことで、どの部分で破綻が出てくるか、綻びが起こるのかが見えてくることもあります。

伊藤:自分の頭の中だけでは、限界があると思います。他人に読んでもらうって大事ですね……家族とか友だちとか。

波津:家族だと恥ずかしくありません?(笑)

伊藤:兄弟とか、同じ趣味の投稿仲間とかはどうでしょうか。

波津:1人で描いていると、どうしても独りよがりになります。仲間に見てもらったりすると、アイデアが少し変わるかもしれません。でも皆、嫌われたくないからあまり、きつい意見を言わないかも。

伊藤:本音を言ってくれる仲間や友人がいると、いいかもしれませんね。

波津:今回は「舐め仏師」のようなガロみたいな作品が入ってきているので、マンガのバリエーションが増えたという感じがしますが。ホラー漫画に関して言うと『月刊ハロウィン』(注:朝日ソノラマが発行していた日本の少女向けホラー漫画誌)が草分けとして出版されて……伊藤先生の『富江』が第1回楳図かずお賞に佳作入選しましたよね? すでにホラーの世界では、グロや心理的なものとかやり尽くしているので、今後はより「どう見せるか」にかかってきます。

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