伊藤潤二先生と波津彬子先生に、実写化したときの視点から説明をする馮さん(撮影/写真映像部・加藤夏子)
伊藤潤二先生と波津彬子先生に、実写化したときの視点から説明をする馮さん(撮影/写真映像部・加藤夏子)

■描いているうちに、どんどん美人になった「富江」

波津:朝日ホラーコミック大賞は、『Nemuki+』(朝日新聞出版)に載る可能性があるので、もう少し少女マンガ的なものや幻想的な描写が入っていてもいいですよね。もっとキラキラした絵がみたいかな。『Nemuki+』で人気のマンガは、キャラクターが素敵な作品が多いんです。伊藤先生にも「富江」という不動のキャラがいますものね。

伊藤:最初の「富江」は今よりも、ちょっと雑だったんです。でも、描いているうちに、どんどん美人になっちゃって……。

波津:1回目の「富江」も、何とも言えぬ味わいですよ。

伊藤:あの頃の「富江」はもう、描けないですから。

波津:当時は、ペン1本で描いていくみたいな感じ?

伊藤:ロットリングで描いていました。

波津:ロットリング? それで、あんな不思議な雰囲気が出せて……。

伊藤:文具店に売っているような画用紙に描くとにじむんです。それで逆に、変な雰囲気が出ちゃったのかも。設定なり、キャラクターなりが予想できちゃうよりも、我々が思いもよらないようなものを第3回朝日ホラーコミック大賞には期待します。

波津:伊藤先生が思いもよらないもの、って?

伊藤:僕はもう古い世代なので、新鮮な才能……ほうっておいてもそんな才能は出てくるとは思いますが、期待しています。我々のアドバイスも通用しないような、ね(笑)。

波津:未来性を感じる作品があるといいですね。今の作品が少し物足りなくても、もしかしたら次の作品はと思わせるような。原作は漫画化や映像化する時に変更しやすいけれど、漫画はもう出来上がっている作品なので、2作目の漫画はどんな感じになるのかと、ワクワクするような。

伊藤:漫画家さんも、原作を読んで新しいイメージがわくかもしれませんね。

波津:うまくハマるといいですね。科学反応みたいに。

伊藤:そうですね。

■応募作品に感じた「多様化」

 選考委員の中には、映像を手掛けている方もいる。TV番組のプロデューサーである後藤博幸さんと、東宝の映像本部 開発チームリーダーの馮年さんだ。漫画を映像化するときには、何を思うのか。前回の応募作品との比較や今後に期待することを訊ねた。

後藤:今年と昨年の最終選考に残った作品を比べると、今年のほうがよく描けている作品が多かった印象があります。原作もマンガも割と、すんなりと読めるものが多かった。去年は、確認しながら読み進めても、疑問がわいてちょっと戻って確認する作業が、多かったことを覚えています。

馮:マンガに関しては特に、切り口が多様化しているなって思いました。やっぱり同じホラーコミックといっても、純粋にじわりじわりと怖いものもあれば、『HONKOWA』っぽい実体験ものも含まれていた。原作もシチュエーション・スリラーがあったり、グロテスクなものがあったり。純粋に、ホラーファンの自分からすると読んでいて楽しかったです。

後藤:「君のことが知りたい」は、短いなかでもすごくパンチがあって面白かった。ラストが最高でしたね。伊藤先生は「最後が読めてしまった」と仰っていましたが、僕としては凄いと思いました。

暮らしとモノ班 for promotion
防災対策グッズを備えてますか?Amazon スマイルSALEでお得に準備(9/4(水)まで)
次のページ