作家・北原みのりさんの連載「おんなの話はありがたい」。今回は、フェミニスト批判について。
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2014年、岡山県で49歳の男が小学生女児をカッターナイフで脅し誘拐、監禁した事件があった。その男の部屋の壁や天井には、びっしりと2次元少女のポスターなどが貼られており、男は犯行の動機を「自分好みに育て、結婚するつもりだった」と語った。その後、『源氏物語』をひきあいに「萌えキャラを批判するなら源氏物語も批判しろ」「少女を自分好みに育てるのは、文学(芸術)作品のテーマであった」という声がSNSやメディアで目立ったことを受け、私は、少女への性虐待を想起させる作品は2次元であっても問題だと雑誌メディアなどで主張した。その後、私のもとには頼んでいないモノが送られてきたり、暴力的な電話やネットでの誹謗中傷に悩まされたりする日々が続いた。
いつまでこういうことが繰り返されるのだろう、と思う。社会活動家の仁藤夢乃さんが、観光庁が後援する2次元少女キャラ「温泉むすめ」を批判した時も、前衆議院議員の尾辻かな子さんが公共の場での2次元少女広告を批判した時も、2人とも殺害予告をはじめ、ネットでの激しい誹謗中傷や攻撃にさらされた。特に、困難を抱える10代の女性を支援してきた仁藤さんは、その後、避難した女性たちをタコ部屋に押し込めている、生活保護を利用したビジネスをしているといったデマを拡散されるなど甚大な被害を受けている。
性産業(の業者や買春者)や、ポルノ(またはポルノ類似表現)を批判すると、「これだからフェミニストは……」という声があがり、「フェミニスト」という言葉が魔女狩り認定のレッテルのように使われてきた。フェミニストのせいで自分たちの大切なロリ・コンテンツが攻撃されている、フェミニストのせいで自分たちの大切なAVが攻撃されている、フェミニストのせいで自分たちの大切な性風俗が批判されている、フェミニストのせいで世の中が生きにくい、フェミニストのせいで表現の自由の危機が……ということのようだが、実際にはフェミニストが何を言おうが言うまいが、2次元少女も、AVも、性風俗も、巨大ビジネスとして今日も安泰である。表現の自由に危機が迫っているとしたら、原因はフェミニストではなく、萎縮するメディアと政治の問題だろう。男たちの生きづらさの原因にだって、フェミがそこまで関わっているとは思えない。そこまでの影響力をフェミニストが持っていたとしたら、この日本はとっくにジェンダーギャップ最下位周辺をうろつくような国から抜け出していたはずだし。