北原みのり(きたはら・みのり)/1970年生まれ。女性のためのセクシュアルグッズショップ「ラブピースクラブ」、シスターフッド出版社「アジュマブックス」の代表
北原みのり(きたはら・みのり)/1970年生まれ。女性のためのセクシュアルグッズショップ「ラブピースクラブ」、シスターフッド出版社「アジュマブックス」の代表

 今、仁藤さんが主宰するColaboだけでなく、若年女性の支援に対する批判も起きはじめている。なかでも、「税金が使われる団体で少女だけを支援するのは問題だ。少年も支援しろ」という主張を真面目に繰り広げている人たちが少なくなく驚く。女の子ゆえに巻き込まれる被害を誰よりも知る当事者たちが、当事者たちとつながり支援をする。それが仁藤さんたちが行ってきた活動だ。

「性暴力は誰もが被害にあう」というのはよく言われることだが、実際には、誰もが平等に被害にあうわけではない。加害者は、子供だから、女だから、セクシュアルマイノリティーだからと、相手を選ぶ。また、社会経験が圧倒的に少なく、性の知識を満足に持つ機会を与えられなかった若年女性たちが性産業に巻き込まれ搾取されているのも事実だ。女性たちの現実を可視化し、これは政治で解決すべき社会問題なのだと声をあげてきたのがColaboだ。そういう女性たちに、「女だけじゃ不公平、男女平等なら男も救え」というのはあまりにも幼稚な要求というものだろう。男の子の支援が必要だと思うのなら、そう考える人が動けばいいのだ。

 平等を実現するには想像力が不可欠だとつくづく思う。

 昨年から私は、美容家の吉川千明さんとFM FUJIで「おんなのひとのはなし」というラジオ番組のDJをしている。子宮頸がんの予防啓発をPRする番組だ。子宮頸がんは性交で感染するヒトパピローマウイルス由来のがんだが、海外では女の子も男の子もワクチン接種をすることで、子宮頸がんは絶滅寸前といわれている。一方日本は、そもそも女の子だけが公的ワクチンの接種対象で、ワクチン接種率そのものが低い。ヒトパピローマウイルスはコンドームでは防ぐことができないため、日本はいまだに年間1万人ほどが子宮頸がんと診断され、毎年約3000人が亡くなっている。

 ラジオを通して、医療関係者の話を聴く機会が増えている。先日は、子宮頸がん予防キャンペーンの予算について話すなか、「女性しかかからない病気に税金を使うのは不公平だというクレームが行政にくる」という話が出て驚いた。そもそもの「平等」「公平」であることの「真ん中」の軸が、性差別社会では男性側に大きく偏っている証拠だろう。「中立」と考えられていることそのものが、女性のいない世界でつくられた男性目線のものだったりするのだ。

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フェミニズムは徹底的に女たちの声