筋層非浸潤性のがんでは、がんが浅いところにあり、削り取りやすい形をしていれば、1回のTUR-BTでがんを取り切ることができます。再発のリスクがある場合には、術後に抗がん剤、あるいはBCG(ウシ型弱毒結核菌)という薬剤を注入する治療を加えることもあります。BCGは結核の予防ワクチンと同じもので、免疫力を高めてがん細胞を破壊する働きをもっています。

 組織の病理検査では、がんの悪性度や筋層への浸潤の有無などが精査され、とくに筋層非浸潤性と筋層浸潤性の境目のような症例では、2回目のTUR-BTをおこなって、浸潤が疑われる部分を再度、切除します。そのあと、再発予防のために、薬剤を注入します。

■膀胱を取ると「尿路ストーマ」が必要になる

 筋層浸潤性のがんでは、TUR-BTでがん細胞だけを削り取ることは不可能であるため、「膀胱全摘除術」がおこなわれます。

 膀胱全摘除術では、標準的には、膀胱と尿管、さらに男性では前立腺と精嚢、女性では子宮と腟壁の一部、尿道を摘出します。膀胱と尿管を取ってしまうため、新しい膀胱と尿の通り道を造設する「尿路変向術」が必要になります。

 手術は開腹手術、腹腔鏡を用いた手術、手術支援ロボットを用いた手術と3つの方法があり、近年、患者の心身への負担が少ないロボット手術が普及してきています。

 尿路変向術を受けると、左右どちらかの下腹部に穴を開けて尿道の出口を造設する「尿路ストーマ(人工の排泄口)」が必要になります。

 尿路変向術にはいろいろな方式がありますが、尿を溜めるパウチ(袋)を付け、自分で清潔を保ち適切に管理しなければならないなど、生活の質(QOL)は治療前に比べて低下してしまいます。

■筋層非浸潤がんでも50%以上の再発率

 膀胱がんで気になるのは、再発率の高さです。筋層非浸潤性のがんでTUR-BTで治療しても、50%以上に2~3年以内に再発がみられます。再発時も同じ治療を受けることができますが、なかには3回、4回と再発するケースもあり、徐々にがんの性質が悪くなってくることもあるといいます。

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なぜ膀胱がんに再発が多いのか