排尿時の痛みや尿の出にくさなどがないのに、突然、血尿が出る――膀胱がんと診断された人の約80%にあらわれる症状です。血尿はいったん止まることもあるため、「週末に運動しすぎたせいだろう」「暴飲暴食したから」と考えて、受診を先延ばしにするケースも多いといいます。
がんが膀胱の内側の粘膜の表面にとどまるうちに治療を始めれば、5年生存率は90%以上ですが、進行すると膀胱摘出と尿路の再建術が必要になります。とくに膀胱がんになりやすい男性は、血尿が出たら検査をするのが望ましいでしょう。本記事は、2023年2月27日発売の『手術数でわかる いい病院2023』で取材した医師の協力のもと、作成してお届けします。
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■8割は痛みのない血尿が最初の症状
膀胱がんは、女性より男性に起こりやすく、男性は女性の4倍の発症リスクだとされています。年間の患者数をみると、男性では前立腺がんに次いで、泌尿器にできるがんの第2位を占めています。患者のうち、80%が65歳以上と高年齢層に多いのですが、45歳以上に範囲を広げると95%以上になるなど、40代、50代での発症もみられます。喫煙と、職業的に芳香族アミンという化学物質に長年さらされることがおもな原因と考えられています。
患者の約80%が初期に血尿の症状があらわれるため、それをきっかけに見つかることが多いのですが、健診の尿検査やほかの病気での腹部超音波検査で見つかることもあります。
■からだへの負担の少ない検査で、がんの有無を調べられる
泌尿器科を受診すると、膀胱がんの診断のために、まず「尿検査」と「超音波検査」がおこなわれます。尿検査では炎症の有無や腎機能などをみるほかに、「尿細胞診検査」で尿中に膀胱がんの細胞が含まれているかどうかを調べます。がん細胞が尿中にあり、超音波検査で膀胱内にがんを思わせる部分があれば、「膀胱鏡検査」をおこないます。
膀胱鏡検査は、先端にカメラのついた軟らかい管を尿道から挿入し、尿道や膀胱の内部の様子を内視鏡で見て診断するものです。検査の際には局所麻酔のゼリーを用います。膀胱鏡検査でがんと確定診断がなされたら、CT(コンピューター断層撮影)やMRI(磁気共鳴断層撮影)などの画像検査で、がんの性質や進行度などをさらに詳しく調べます。