担当者によると、区長会では定期的に会合の場を設けているが、昨年、「移住者が共同作業に参加してくれない」という声や、移住者から「体質が古い」というニュアンスの発言をされたなどの話が出た。区長たちも苦慮している様子だったという。
「(七か条で)使った言葉だけに焦点が当てられてしまいましたが、排他的な意図はありません。池田町に移住してから『聞いていない』『知らなかった』とならないように、池田町ってこんな町ですよ、集落ってこんなところですよ、と包み隠さずお見せする方が丁寧ではないかとの考えが区長会でまとまり、提言を出すに至りました」(担当者)
都会暮らしだとなかなか想像がつかないが、集落での共同作業とは、どんなものなのか。
担当者によると例えば、
▽河川のごみ拾い
▽夏場の草刈り
▽冬場の公共施設などの雪下ろし
▽祭りの手伝い
▽消防隊への参加
▽区費の支払い
などがあるという。
「どこも小さな集落で高齢化も進んでいますので、みんなで助け合い、協力し合いながら暮らしています。雪かきを手伝ったり、消防隊では小型ポンプの使い方を学んで、いざ火事が起きたらみんなで助けるための備えをしたり、そういうコミュニティーができあがっているのが池田町です。長い歴史の中で、そうした関係性を築き上げてきていますので、人間関係が濃密なのが特色なんです」(担当者)
だが、例えば、都会の喧騒を離れて一人で暮らしたいと考えている移住者の場合、望んでいた暮らしとはギャップを感じるかもしれない。人によっては、さまざまな共同作業が「古い体質」と映り、あつれきを生むかもしれない。
とはいえ、移住者が困ったときに助けてくれるのは、おそらく集落に住む地元住民だろう。「静かに暮らして、無農薬野菜を育てたい」と話す移住希望者もいたそうだが、その畑は、集落の誰かから借りなくてはならないのだ。
担当者は、
「区長たちにとって、若い人が移住してきてくれるのはうれしいことなんです。だからこそ、みんなで助け合って暮らしている、その仲間になってほしいと願っています。移住前に何度も足を運んでくれた人には、そうした集落の特色を説明したり、前もって区長を紹介するなどして、安心して移住していただく工夫をしています。小さな町ならではの濃い人間関係や、田舎暮らしを楽しんでいる移住者もたくさんおられます。やっぱり、何度か町に来て、町を知っていただいてから移住された方が、その後がスムーズだと思います」としつつ、こう続ける。