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 個性派俳優・佐藤二朗さんが日々の生活や仕事で感じているジローイズムをお届けします。今回は撮影中に起きた“心霊現象”について。

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現在、ある映画の撮影、真っ只中です。

来年公開予定のその映画、詳しくは情報解禁の時を待ち、またお知らせするとして。

演出部(いわゆる助監督さんですな)にK氏という男性がおりまして。

このK氏、ものすごい、

汗っかき。

撮影部、録音部、照明部、メイク部、衣装部、制作部、俳優部、誰一人として汗をかいてないのに、K氏だけ、汗だく。汗まみれ。汗みどろ。

いや、全体の流れを見て、各部署すべてに気を配らなければいけない演出部は確かに大変です。

ですが、子どもの頃から生粋の汗っかきで、楽屋から袖に行っただけで汗だくになり、そのまま舞台に出たもんだから、お客さんに「コイツはまだ一言も喋ってないのになんでいきなり汗だくなんだ」と思わせたこの僕が、真夏ともなれば人が歩いてるというより汗が歩いてる感じになるこの僕が、全く汗をかいてないのに、K氏、汗だく。

ただ、女性より少ないとはいえ、男性にも更年期障害はあると聞きます。

K氏は48歳。もしそういったことが原因なら、我が夫婦も全く他人事ではないし、更年期障害で深刻にお悩みの方々も沢山いらっしゃるゆえ、絶対に軽率にチャカしてはいけない。

ですがK氏は、あくまで「もともと汗っかき」とのこと。「子どもの頃からすごい汗っかきなんです」。

そんなK氏が、あるシーンの撮影で奇跡的に(?)全く汗をかいていないことがありまして。いや、いいんですが。K氏、汗をかくことがマストではないですが。ただでさえ仕事が多い演出部に、汗をかくことを義務かのように言っては申し訳ないのですが。ただ、K氏が汗をかいてないのが本当に珍しく思えたので、

「あれ? 工藤ちゃん、今日は汗かいてないねぇ」「ええ、すみません」「いや、謝らなくていいんだよ」みたいな会話を僕と交わし、現場が和んだ「その時」です。

いや、「その時」以前に、完全に名字を言ってしまっておりますが(本人許諾済み)、改めまして、現場が和んだ「その時」です。

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「ギャッ!!!!!!」一人飛び退いて驚いた