米上空の中国偵察気球 軍戦闘機が撃墜(写真/アフロ)
米上空の中国偵察気球 軍戦闘機が撃墜(写真/アフロ)

 飛行機は方向舵、昇降舵と呼ばれるかじを傾けて向きを変える。しかし、かじに十分な風が当たらないと機体をうまくコントロールできない。

 高度18キロの空気密度は地表に比べてわずか10分の1ほどしかない。なので、空気の流れはほとんどない。「要するに宇宙空間に近い場所です」と、菊池さんは言う。

「気球に搭載された装置を機関砲で破壊するにしても、思うように機体を制御できない状況で照準を合わせるのはかなり難しい。弾を外して任務を完遂できない可能性があるのなら、やはりミサイルの使用がベターな選択肢でしょう」

高額ミサイルが当たらない?

 ミサイルで撃墜するのであれば、陸上基地や護衛艦からミサイルを発射して気球を打ち落とせないだろうか?

「地上や海上から発射する地対空ミサイルや艦対空ミサイルは非常に高価で、費用対効果が著しく悪いうえ、撃墜できない可能性が高いんですよ」

 今回、米軍のF-22戦闘機が発射したAIM-9X空地空ミサイルの価格は1発約5000万円。それに対して、空自が保有するPAC-3地対空ミサイルは約5億円。海自のイージス艦に搭載されているSM-3艦対空ミサイルにいたっては約40億円(ブロック2A)である。

 確かに費用対効果は非常に悪いが、これほど高額なミサイルが当たらないとは、どういうことなのか?

「PAC-3の場合、18キロという高度は射程ぎりぎりです。なので、当たらない場合も考慮して、複数のミサイルを発射するとさらに費用がかさみます。逆にSM-3の場合、高度18キロというのは距離が近すぎます。飛来する弾道ミサイルをほぼ宇宙空間で迎撃するためのミサイルですから」

 たとえ射程内に気球があったとしても、いずれのミサイルも高速で飛来する物体を迎撃するために開発されたものなので、ほぼ同じ高度をゆっくりと飛行する気球を打ち落とせるかは、わからないという。

気球を泳がせてきた米国

 しかし、そもそも領空を侵犯する気球を見つけられなければ、撃墜もままならない。

 今回、米国は中国の偵察用気球をアラスカ州・アリューシャン列島から追跡している。つまり、米国本土のはるか遠方で気球の侵入を探知し、RC-135電子偵察機やU-2高高度偵察機を接近させて気球の意図を調べ上げたうえで撃墜した。

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