筆者も流山市に育ち、小中は市内の公立校に通った。友人と遊んだ森、見慣れた畑や住宅街が姿を消し、鉄道が開通してまったく新しい街がつくられた。おおたかの森を「ニコタマ」と呼ぶ地元民に会ったことはないが、目立った産業も人が集まる中心街もなく、今後の発展が難しいと思われた街は大きく生まれ変わった。TX沿線の発展を喜ぶ若い住民もいる。

 それでもある70代の女性は、こんな言葉を口にした。

「昔は県外の人に流山って言っても通じなかったから、知ってもらえるようになったのはうれしいですよ。でも、学校の問題があったり森がどんどん減っていったりと、良いことばかりじゃないですよね」

 育った街に脚光が当たるのはうれしい一方で、その光の当てられ方に違和感を持つ地元住民がいるのも、また事実である。

(AERA dot.編集部・國府田英之)

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國府田英之

國府田英之

1976年生まれ。全国紙の記者を経て2010年からフリーランスに。週刊誌記者やポータルサイトのニュースデスクなどを転々とする。家族の介護で離職し、しばらく無職で過ごしたのち20年秋からAERAdot.記者に。テーマは「社会」。どんなできごとも社会です。

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