先日、番組で鈴木雅之さんとご一緒したのですが、あの10メートル先からでも「あ、鈴木雅之だ!」と分かる存在感たるや、「やはり芸能人はこうでなくちゃ!」と感動すら覚えるほどでした。
一方、同じ現場で、とても顔が小さく華奢な娘さんが3メートルぐらい離れた場所に立っていました。衣装とも私服ともつかない白いワンピースを着ており、もちろん一瞥するだけでは顔の判別はできません。しかし、彼女から沸き立つオーラは「ただ者」ではなく、その可憐で凛とした空気に圧倒されつつも、おそらく私は凄い目つきで彼女を凝視していたのだと思われます。ほどなくして、彼女がゆっくりと私の方に近づいてきました。そして「すいません。上白石萌音と申します」と言い、彼女の顔に私の眼のピントが合う暇もなく、すぐに立ち去ってしまいました。明らかに巨大な女装にガンつけられて怯える少女の声でした。
追いかけて謝るわけにもいかず、ただただ申し訳ない気持ちでいたところに、純烈の酒井一圭さんが通りかかりました。2メートル以上離れていましたが、一瞬で彼を認識できた私は、思わず彼のところに駆け寄り「この世代は顔が大きくて安心するわ!」と、大変失礼なことを口走ってしまったぐらい、とにかく私の視力は低下の一途を辿っています。
ミッツ・マングローブ/1975年、横浜市生まれ。慶應義塾大学卒業後、英国留学を経て2000年にドラァグクイーンとしてデビュー。現在「スポーツ酒場~語り亭~」「5時に夢中!」などのテレビ番組に出演中。音楽ユニット「星屑スキャット」としても活動する
※週刊朝日 2023年3月3日号