人喰い鬼の棲む世界を舞台に、主人公の竈門炭治郎(かまどたんじろう)と鬼との戦いを描いた「週刊少年ジャンプ」の人気連載。コミックスの累計発行部数は4千万部を突破し、オリコン週間コミックランキングでは、なんとトップ10すべてを3週連続で独占した。昨年にはアニメ主題歌を担当するLiSA(32)が紅白歌合戦初出場を果たし、その勢いはもはや「社会現象」とまで評された。前出の小新井さんは言う。
「18年6月のアニメ放送決定時点で250万部だった作品が、約1年半で4千万部超え。そんな伸び方は初めて見ました」
アニメの影響もすこぶる大きいことがわかる。
「原作が面白く、映像も最高のものを制作していただいた。それをたくさんの方に届けたく、配信先を多くしました。テレビに例えると、全チャンネルで放送しているようなイメージです」
そう語るのは、同作品のアニメを制作するアニプレックスの高橋祐馬プロデューサー(39)だ。視聴者との接点を作るために、テレビ21局に加え、ネットフリックスやAmazonプライムなど20の配信先と提携した。
それだけではない。配信ならではの自由度の高さを使い、ストーリーの区切りに、過去の放送分をまとめて見せる「お祭り」も用意。高橋さんが言う。
「口コミが広がり、面白そうだなと感じた方が集まれる場を作りたかったんです。ストーリーに合わせて役を演じるキャスト情報を発表したり、盛り上がりを細かく意識しました。今年公開する劇場版はアニメ以上のお祭りにしたいです」
KADOKAWA Game Linkageの「アニメマーケティング白書2020」の調査によれば、『鬼滅の刃』が満足度48.9%で1位を獲得。17年の調査開始以来、50%に近い数字が出たのは初めてだという。同社の主任データサイエンティストの玉田憲生さん(50)は、こう分析する。
「作品の感想を共有したい欲求が強いコア層の視聴者が多くいます。一方、愛着を示す『ファン度』は3位。今後さらにファンを育成、獲得することでよりマネタイズの幅も広がります」
(編集部・福井しほ、小柳暁子)
※AERA 2020年3月16日号より抜粋