しいたけ./占師、作家。早稲田大学大学院政治学研究科修了。哲学を研究しながら、占いを学問として勉強。「VOGUE GIRL」での連載「WEEKLY! しいたけ占い」でも人気
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AERAの連載「午後3時のしいたけ.相談室」では、話題の占師であり作家のしいたけ.さんが読者からの相談に回答。しいたけ.さんの独特な語り口でアドバイスをお届けします。
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Q:美大のデザイン科に通う19歳です。もっと自信もったほうがいいよ、悲観的に考えるのやめたら、とよく言われます。占いができる人にみてもらったら、「言い訳して逃げてきたよね」と言われました。今年はもっと実力をつけて自信が持てるようにしたいです。でも、変われないんじゃないかと不安で仕方ありません。(女性/大学生/19歳/おひつじ座)
A:自信と不安って、やっぱりリンクしているところがあると思います。これは僕の感覚なんですが、自信は本業以外の分野からでも循環してきます。些細なこと、高さほんの5センチのハードルでもいいから、できなかったことを乗り越えられたという自信が持てたら、それは必ず循環します。だから、自分の仕事とか本業以外の分野で、できなかったことにチャレンジするのがいいと思うんですね。
いつかやってみたいけど勇気がいると思っていたこと。例えば料理ができるようになりたかったら本を買ってきて作ってみるとか、人見知りの人だったら、洋服屋さんに行って「私、何が似合いますか?」って聞いてみるとか。
周りの人にしたら全然ハードルが高くないかもしれないけど、本人にはその5センチってすごい高さだから。それを乗り越えるのはすごく大きいことです。できれば体を動かす、体感が伴うことがいいと思います。何か人に聞くとか、どこかに出かけるとか。
あなたの場合、少し特殊な事情もあるように思います。美大に通われているとのことで、表現者としての入り口に立っていらっしゃいますよね。表現者は世の中の正解に沿うんじゃなくて、自分で自分の正解を作っていく世界に籍を置いているのです。
だから、あなたが表現や生き方について悩むときの悩みの性質って、他の人が人に聞くのとはおそらく次元が違うような気がします。鳥がうまく飛ぶためにどうしたらいいでしょうかっていう質問を、トカゲに聞いてもしょうがない。それは生態が違うから。
おひつじ座も、ちゃんと絶望を抱えてる人たちです。絶望があっていいんだって思えたとき、絶望と友達になれたときに道が開けます。
もうひとつアドバイスするとすれば、「自信がない」ということをあまり人に相談しなくてよいと思います。それは、ここぞとばかりにマウンティングされることが起こり得るから。「正論のアドバイス」って、相当の信頼関係がない限り、僕は暴力だと思っています。正論だからこそ、とどめを刺すことができるし、ダメージを与えることもできる。信頼関係のない人からのアドバイスは、聞き流して大丈夫です。
※AERA 2020年3月9日号