女性の社会進出も少しずつ進んでいる、とは思う。だが、ふとした瞬間にまだ男性社会だと感じるときもある。
たとえば、出産後に産休を経て女性アナウンサーが退職すれば批判の声が上がることもある。個人にいろんな事情があることが理解されていないのかもしれない。
「だからこそ、仕事をしながら子どもを産み育てるという選択肢をもっと多くの人が選べれば、みんなが慣れて当たり前になっていくのではと思うんです」
女性がすべてを背負い込まない社会になればと願う。
昨年12月に世界経済フォーラムが発表した「ジェンダーギャップ指数」。男女格差が大きいほど順位が低くなるこのランキングで、日本は過去最低の121位に沈んだ。特に、政治分野や、経済分野の指導的地位に占める女性の割合が低いことが足を引っ張った形だ。
16年には女性活躍推進法が施行されたものの、いまだ「管理職」と呼ばれる層に女性は少ない。女性がチャレンジしにくい状況が残ることもあるが、女性自身がしり込みするケースも多い。だが、環境や仕事内容で価値観がガラリと変わる。
リクルートで執行役員を務める瀬名波文野さん(37)は、2月14日、同社の新任取締役候補になった。正式決定は6月の株主総会を経た後だが、名前が公表されるや否や、
「30代、女性、大企業の取締役」
そんな“ラベル”がインターネット上を駆け巡った。
エネルギッシュで、仕事に真っすぐ。そんな瀬名波さんだが、リクルートに入社当初はまったく違う未来を描いていた。
「可愛いおばあちゃんになりたかったんです。親には大学まで出してもらったから、ある程度頑張ったと思える3年目くらいで寿退社したいと思っていました」
就職活動中も、隠さずそう話すたびに面接担当者はみんなきょとんとした。だが、リクルートだけは違った。どうしてそう思っているのか、考え方に興味を持ってくれた。
「リクルートは今は規模が大きくなったけれど、はじまりはベンチャー。性別はもちろん、年齢やキャリアにとらわれない土壌がある。気付けば、仕事を通して社会に関わることが面白くなっていました」
その風土を強く実感したのが、同社が買収したイギリスの会社への駐在に立候補したとき。当時入社7年目の瀬名波さんは、マネジメント経験やファイナンスの知識といった条件のほとんどを満たしていない。面接も、「それなのに、なぜ応募したの?」の言葉から始まった。
「選ぶ側の人たちは、年齢も性別も気にしていなかったと思っています」
面接を通過し単身渡英。だが、ここで初めて壁にぶち当たる。