新型コロナウイルスの感染拡大は、人が集まるスポーツやイベントの中止や延期をもたらした。気になるのは東京五輪への影響だ。AERA2020年3月9日号は、感染症の専門家に開催の可否を聞いた。
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「多数が集まる全国的なスポーツ、文化イベントは、今後2週間は中止、延期、規模縮小などの対応を要請する」
安倍晋三首相は2月26日、新型コロナウイルス感染症対策本部の会合でこう述べた。政府の専門家会議が2月24日に「これからの1~2週間が、(感染の)急速な拡大に進むか、収束できるかの瀬戸際」とする見解を表明したのを受けたものだ。首相の「要請」と相前後して、イベントの中止や規模縮小が相次いでいる。
サッカーJリーグは、3月15日までの約3週間のJ1からJ3までの公式戦計94試合を延期することを発表。プロ野球は3月15日までのオープン戦72試合を無観客で開催すると発表した。ラグビートップリーグやバスケットボールBリーグも公式戦を延期し、3月8日に初日を迎える大相撲春場所(エディオンアリーナ大阪)も、無観客での開催も含めて検討されている。
心配されるのは東京五輪(7月24日開幕)とパラリンピック(8月25日開幕)への影響だ。すでにボッチャのテストイベントが中止されたり、代表選手選考を兼ねた国際大会が中止または延期されたりするなど影響が出始めている。
AP通信は2月25日、国際オリンピック委員会のディック・パウンド委員(カナダ)が、東京五輪の開催の可否は5月下旬が判断の期限になるとの考えを示したと報じた。
日本スポーツマネジメント学会の会長で、早稲田大学スポーツ科学学術院の原田宗彦教授によると、スポーツイベントに関して感染症や自然災害を想定したリスク管理の研究は乏しく、それぞれが手探りの状態で対応しているという。
「リオ五輪の前にも、現地でジカ熱の流行があったが開催には影響がなかった。今後気温が高くなって沈静化し、東京五輪が通常通り開催されることを願っている」(原田教授)