※写真はイメージ(gettyimages)
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 AERA2020年3月2日号では、医師573人へのアンケートを実施。過酷な労働環境ながらも、医師として誇りを持って働く医師たちの声が聞こえてきた。

【図を見る】医師573人にアンケート!年収は?労働時間は?医療現場の課題とは…

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 夢のホワイトカラー、医師。給与水準は高いが、一方で激務のイメージもつきまとう。アエラが2月、医師専用コミュニティーサイトMedPeer(メドピア)の協力のもと実施したアンケートに寄せられた現役医師573人の声からは、過酷な勤務環境にもかかわらず、高いモチベーションを持ちつつ現場を支える姿が改めて浮き彫りになった。

 困難な手術の成功や患者から感謝される体験。医師の仕事には、他の職業にはない重い責任とそれに見合うやりがいがある。「医学生に戻るとしたら、どの科を選ぶか」の質問に対し、「医師にならない」と答えたのは、1.6%にあたる9人だけ。

 自らの仕事に誇りを持っていることがうかがえるコメントが相次いだ。「やりがいはあります。やり方で変わります」(30代男性、耳鼻咽喉科)、「人の命を担っており大変な職業ではあるが、やりがいはとてもある」(30代女性、小児科)

 研究、診察、教育の役割を一手に担う大学病院は本来、医師にとって「王道」だ。それなのに、医局を離れる医師も増えてきた。医局員が長時間にわたり、低賃金で働かざるを得ない勤務構造の問題が背景にあるとみられる。

 実際、どれほど過酷なのか。アンケートによると、1カ月に取る休日は、2日未満が24%、4日未満を含めれば半数に上る。週休2日を実現しているのは5人に1人だけだ。

 都内の大学院生で内科医の30代男性は、大学院1年目の頃、土日も含めて週7日、なんらかの形で病院に出勤した。ほぼ毎日、午前8時半から始まる外来診察で、男性が担当したのは事務仕事だった。ブースにやってくる1日およそ100人の患者を医師が診察する様子を見て、症状や処方薬をカルテに記入する。CTやMRIなどの医療機器を使う段取り、申請書類の作成もこなす。外来の後は、病棟に入院する患者の回診や処置をするので、退勤は夜10、11時になることが多かった。疲労がたまる中、合間にある大学院の講義に出席しなければならない。カードに出席の記録を残すためだけに教室に行くこともあった。

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小長光哲郎

小長光哲郎

ライター/AERA編集部 1966年、福岡県北九州市生まれ。月刊誌などの編集者を経て、2019年よりAERA編集部

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