先日、下の子が1歳の誕生日を迎えました。この1年、あっという間だったと言うにはあまりにもたくさんのことがありました。黄疸が出て何度も小児科へ通ったこと。母乳が出ず、今すぐミルクを買ってきてと夫をスーパーへ走らせたこと。下の子が初めて寝返りをした瞬間は、上の子と手を叩いて喜び合いました。そんな出来事の一つ一つを思い出しながら、1年無事に過ごせたことを祝いました。
【写真】日本とこんなに違う!アメリカのシンプルなお子さまランチ
思えば上の子のときは、このように来しかたを振り返る余裕はありませんでした。なぜなら、誕生日ケーキ作りに頭を痛めていたからです。子どもが初めて食べるケーキだから、おいしいものを作ってあげたい。ただ、糖分や脂肪分は控えたい。けれど砂糖を完全にカットするとうまく膨らまないし、大人には味気ないし、生クリームやバターを使わないとしたら一体どうやってきれいにデコレーションするの……などと考えを巡らせ、レシピを検索し続けていたら、脳みそが爆発しそうになったのです。まぁそんな試行錯誤も楽しいものですが、毎日の家事の合間を縫って赤ちゃんも大人も食べてくれそうなレシピを見つけ出し、一から手作りするのは、なかなか骨が折れる作業でした。
そんな話をアメリカ人の友人にしたら、こう返されました。
「そんなに気を遣うことなかったのに! 1歳の誕生日ケーキなんて、ぶっつぶすためにあるんだから」
ぶぶぶ、ぶっつぶす!? そうなんです。アメリカでは、赤ちゃんの1歳の誕生日に「スマッシュ・ケーキ(a smash cake)」なるケーキをあげることが定番化しています。スマッシュはバドミントンのスマッシュ、あるいは大乱闘スマッシュブラザーズのスマッシュで、「強く叩く」とか「つぶす」という意味です。マリオが敵をスマッシュヘッドバットで吹っ飛ばすがごとく、全身を使ってケーキをべちゃべちゃに崩し、自由に遊び食べする赤ちゃんの様子をみんなで愛でながら写真に収めるというのが趣旨です。もとはメキシコの風習だったとか、はたまた結婚式の際に新郎新婦が互いの顔にケーキをなすりつけ合うアメリカの習慣から来ているとか。起源ははっきりしませんが、2005年前後から盛んに行われるようになったらしいです。写真映えしますから、フェイスブックなどのSNSの流行と共に広まったのかもしれません。普通のケーキのように食べられる素材で作りますが、完食させることが目的ではないため、味は二の次でオーケーです。
食べ物を遊びに使うなんて、と眉をひそめる方もいるかもしれません。アメリカにも「馬鹿げたトレンドだ」との批判の声があります。でも、個人的にはスマッシュ・ケーキを導入することでずいぶん気持ちがラクになったので、ぜひおすすめしたい。難点は赤ちゃんの体やテーブル、床が食べ物で汚れてしまうことですが、そんなの毎日の離乳食で慣れっこですから屁でもありません。ですよね皆さん……(遠い目で)。