2018年12月に始まった辺野古新基地の埋め立て。軟弱地盤が見つかった大浦湾(右側)は手つかずのままだ/2019年12月9日、沖縄県名護市で (c)朝日新聞社
2018年12月に始まった辺野古新基地の埋め立て。軟弱地盤が見つかった大浦湾(右側)は手つかずのままだ/2019年12月9日、沖縄県名護市で (c)朝日新聞社
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辺野古のキャンプ・シュワブゲート前で続く市民の抗議行動。警備の経費も膨らむ一方だ (c)朝日新聞社
辺野古のキャンプ・シュワブゲート前で続く市民の抗議行動。警備の経費も膨らむ一方だ (c)朝日新聞社

 沖縄の辺野古新基地の完成が2030年代以降にずれ込むことを国が認めた。今年も膠着状態が続くのは必至で、無謀な政策の末路は依然不透明だ。AERA 2020年1月20日号で掲載された記事を紹介する。

【写真】辺野古のキャンプ・シュワブゲート前で続く市民の抗議行動

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「普天間飛行場の一日も早い危険性除去という『辺野古』の根拠が失われた」

 辺野古新基地計画について、政府が「工期12年」との試算を発表した翌日の昨年12月26日。沖縄県の玉城デニー知事はこう指摘し、米軍普天間飛行場の閉鎖・返還を辺野古新基地建設と切り離す必要性を改めて強調した。

 2006年の在日米軍再編に伴い、日米が建設予定地を「辺野古沖」から現行の「辺野古沿岸部」に変更したのも、「工期短縮」によって一日も早く普天間返還を果たす、という大義名分があったからだ。それから13年。さらに「最低でも」12年かかることを国が認めたのだ。県の同意を度外視しても、技術的難度や反対派の阻止行動も排除しやすい点を考慮して現行の沿岸部に建設することで、「早ければ22年度の普天間返還」を目標に掲げた国の政策論理は完全に瓦解(がかい)した。

 国は14年時点で「少なくとも3500億円以上」としていた総工費も9300億円に修正。希望的観測に基づく数字のめっきがポロポロはがれ落ちている。

 工期や工費が大幅に膨らんだ主な要因は、大浦湾に広がる「マヨネーズ並み」の軟弱地盤対策だ。埋め立て面積全体の4分の3を占める。16年までのボーリング調査で判明していた軟弱地盤を国は公表せず、18年3月に県民らの情報公開請求で明らかになった。

「国の工期や工費の見積もりは防衛省の願望にすぎません」

 こう話すのは、いち早く軟弱地盤の資料を入手した那覇市在住の元土木技術者、北上田毅さん(74)だ。

 国が試算した工期は、県が設計変更を認めた時点を起算日に設定している。国は年度内にも県に設計変更を提出する見込みだが、玉城知事は申請を認めない方針だ。国と県との裁判闘争に移る可能性が高いが、この期間は考慮に入れられていない。

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渡辺豪

渡辺豪

ニュース週刊誌『AERA』記者。毎日新聞、沖縄タイムス記者を経てフリー。著書に『「アメとムチ」の構図~普天間移設の内幕~』(第14回平和・協同ジャーナリスト基金奨励賞)、『波よ鎮まれ~尖閣への視座~』(第13回石橋湛山記念早稲田ジャーナリズム大賞)など。毎日新聞で「沖縄論壇時評」を連載中(2017年~)。沖縄論考サイトOKIRON/オキロンのコア・エディター。沖縄以外のことも幅広く取材・執筆します。

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