【ブラインドサッカー】川村怜/東京大会でパラリンピック初出場となる日本代表の主将でエースストライカー。空間認知能力と展開の予測力にたけている(撮影/写真部・東川哲也)
【ブラインドサッカー】川村怜/東京大会でパラリンピック初出場となる日本代表の主将でエースストライカー。空間認知能力と展開の予測力にたけている(撮影/写真部・東川哲也)

 AERA本誌で2019年4月から連載の「2020─Paralympics─TOKYO」。東京パラリンピックで活躍が期待されるパラアスリートの魅力を迫力ある写真と共に伝えている。AERA 2019年12月30日-2020年1月6日合併号では、パラアスリート達が「スポーツの力」について語った。

*  *  *

 過去3大会は通訳、メンタルトレーナーとしてパラリンピックに関わり、東京大会は選手として出場を目指すパラ・パワーリフティングの山本恵理(36)=日本財団パラリンピックサポートセンター=は言う。

「障害者が健常者を、健常者が障害者を、互いを感じられる共存のイベントだと思う」

 障害者スポーツはコーチに健常者も多く、視覚障害者の伴走や競技アシスタントなど、健常者と共に戦う競技や選手が多い。

「お互いに協力し合わなければ成功しないし、勝てない。思いが合致して、そこに立つんです」

 車いすフェンシングの藤田道宣(33)=日本オラクル=も、

「パラリンピックが障害者と社会との共存のきっかけになる」

 と期待する。自身は大学2年のときの海水浴中の事故で頸髄を損傷し、胸から下の筋肉が使えない重度障害を負った。

「車いすなのにスポーツもやるんですね、と言われることもある。知らない世界を知っていくことで、互いに理解し合える。そんな社会をつくるためのひとつのツールになればいいと思っている」

 パラリンピック過去5大会に出場し15個の金メダルを手にした女王、水泳の成田真由美(49)=横浜サクラスイミング=はスポーツを「自分を映す鏡」と語る。

 練習ノートを開くと、これまでの練習メニューを見て「私すごい!」と自信がつき、自分の字とは思えないほどの雑な字を見て調子が悪かったと実感する。

「自分と向き合い、過去の自分の努力に報いなくてはと奮い立たせてもらう。だからパラスポーツは宝物ではないか。見る人には、アスリートの人生を感じてもらえるとうれしい」

「パラスポーツは、人間の新たな可能性を感じさせてくれる」

 とは、ゴールボールの川嶋悠太(25)=アシックス=の言葉だ。ゴールボールは視覚障害者向けに考案された競技で、選手はアイシェード(ゴーグル)で視覚をふさがれた選手が3人で1チームとなり、バレーボールと同じ広さのコートで、鈴入りのボールを投げて相手ゴールを狙う対戦型競技。川嶋は八王子盲学校中学部1年生のときの授業で競技と出合った。

次のページ