「自分の努力の成果がわかりやすいのもスポーツのいいところ」

 と杉浦。東京パラリンピックを49歳で迎える。多くの人は成人後、加齢とともに能力は低下していくが、杉浦は日々の計測で自己記録を更新し続けている。

 杉浦と同じく、「スポーツは生きる力を与えてくれる」と語ったのは車いすラグビーの池崎大輔(41)=三菱商事=だ。6歳のときに手足の筋肉が徐々に衰えるシャルコー・マリー・トゥース病を発症した。

 15年間車いすバスケに打ち込んだ後、29歳で車いすラグビーに転向。日本代表のエースとして16年リオ・パラリンピックで銅メダル、18年の世界選手権を初制覇し、個人でMVPも受賞した。

「以前なら障害者にとってスポーツはリハビリでした。でも、今は職業として、スポーツで人生を歩んでいくことができる。ありふれた言葉かもしれないけど、スポーツは希望です」

 義足の陸上選手として日本人初のメダリスト、陸上の山本篤(37)=新日本住設=は「スポーツは人を笑顔にする力がある」と言う。

「障害者こそスポーツをするべきだと僕は思うんです。障害を負って仕事ができない、外に出られない人がいる。でもスポーツをすることで、行動の範囲が広がる。生活の質も上がる。スポーツが明るい元気な心を取り戻させてくれる」

「スポーツのおかげで今の自分がある」と語るのは、パラスキーのメダリストで、テコンドーで東京大会を目指す太田渉子(30)=ソフトバンク=だ。16歳でパラリンピックに出場し、フィンランドへスキー留学。スポーツが世界へ導いてくれた。

「スポーツはコミュニケーションのツールになり、人をつなげ、よりよい社会ができていく。そういう意味で、スポーツは世界を変える力がある」

 パラリンピックが持つ力への期待の声も聞かれた。(編集部・深澤友紀、ライター・島沢優子)

AERA 2019年12月30日-2020年1月6日合併号より抜粋

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