女性は、シンパの母親から再び「先生と3人で飲もう」と呼び出され、教諭にホテルへ連れ込まれそうになった。ほかにも「〇〇さんの胸は……」と何度もからかうように言われるなど、屈辱的な仕打ちを受けた。それらすべてを、数少ない教諭シンパではない母親に打ち明けたところ「我慢するなんて、おかしいよ」と言われた。
女性はその後、教諭のシンパの母親たちに、教諭に自分へのわいせつ行為について謝罪してほしい旨を訴えたが、逆に「さわったという証拠はない。誘ったのはそっちだ」などと責められた。教諭は「不愉快な思いをさせたことは謝罪するが、さわっていない」などと言い訳をしていることも伝え聞いた。自分が誘ったことにされていることにショックを受けた。
女性は、勇気を振り絞って警察に被害届を出した。法務省の調査では、性的な被害に遭った人のうち、捜査機関に届け出た割合は14.3%。被害届がいかにハードルが高いかがわかる。
加えて、保護者が教職員からわいせつ行為を受けるケースはまれだ。文部科学省の調べによると、公立校で「わいせつ行為等により懲戒処分等を受けた教職員」は2017年度で210人。ここ数年は200人台前半で高止まりしている。行為の対象は、約半分が「自校の児童・生徒」で、次に多いのが自校の教職員。調査の対象属性に「保護者」はない。
一般的なケースではないからか、女性が1回目に訪ねた警察署では受理してもらえなかった。対応した署員からは、
「なぜすぐに通報しなかったのか? さわられた服からDNAが検出できたのに」
と被害を受けて1カ月以上経過している点を厳しく問われた。
「わかってもらえなかった。親が先生の意に反することをすると、子どもが制裁を受ける。わが子が人質だから通報できなかったと話したのですが」
事実、制裁は過酷だった。
教諭は試合に負けると体育倉庫に選手を集めて叩くなど、暴力をふるった。女性の息子への理不尽な扱いもあった。学校で決められた活動時間以外に、ほかの体育館で「夜練」と呼ばれる活動も行っていた。文科省が作成した「部活動ガイドライン」が時短部活を提唱するなか、同じ部員、同じ指導者で行うのに、表向きの名称「民間クラブの活動」を隠れ蓑に長時間の練習を強いる。相当にブラックな部活だった。