教員のセクハラ・パワハラが後を絶たない。中でも表面化しにくいのが、保護者が教員からセクハラを受けるケースだという。AERA 2019年12月30日-2020年1月6日合併号では、セクハラ被害を受けた保護者が苦しい胸の内を語った。
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「先生、起きてください。着きましたよ」
2019年の夏、東海地方に住む40代の女性が、中学校のバレーボール部で息子を指導していた元顧問の男性教諭を初めて車で自宅に送った夜のことだ。
突然、教諭の右手が女性の左胸に伸びてきた。Tシャツの上からわしづかみにするように何度もさわる。
「やめてください。寝たふりしないでください」
払っても、払っても、伸びてくる手を必死に押さえた。
後部座席には、片道1時間かかる教諭の自宅までの送迎に付き合ってくれた別の部員の母親も乗っていた。狭い車内で、この母親が気づかないわけがない。女性は、
「助けて。先生をやめさせて」
と助けを求めたが、返事はない。教諭は押さえられた手を振りほどいてはまたさわるを繰り返したあと車を降りた。開けた窓から車に顔だけ突っ込むと、
「いやあ、〇〇さんの胸はすごかった」
と言って薄笑いを浮かべた。
女性が狼狽しつつ、同乗していた母親に、「あんなことをする先生なの」 と聞くと、「寂しいんじゃないの?」と言われた。教諭に妻子はいる。同乗していた母親は、「眠いから寝るわ」と何事もなかったような態度だった。この母親は、男性教諭のいわゆる“シンパ”だ。
教諭は道中で「頭が痛いから車を止めて」と言い、「休憩したいからホテルに行こう」と誘ってもいた。
このことは当初、ほかの誰にも言えなかった。
「自分が声を上げて、子どもが一生懸命取り組んでいる部活動に支障が出るのが怖かった。私さえ黙っていればいい。泣き寝入りになるけど、それも仕方がないと思った」
部活における教師の存在は絶大だ。あらゆる面でブラックな状態が野放しにされやすい。