なぜゴッホの絵は人を惹きつけるのか。林さんはゴッホを追究しているうちにうつっぽく落ち込んでしまったと話す。

「人に認められず、顧みられることがなくても、ただただ真摯に創作に取り組んだ。その生き方をなぞると、心がいっぱいになってしまうのです」

 それは「ゴッホという病」と呼べるものではないか。

「器用に生きられない、それがゴッホの本質です。自炊もできなければ経済感覚もない。世の中の基準に自分を合わせることができずに苦しんだ。だからこそ彼の絵画は、同じような経験をどこかに持つ我々の心に入ってくるのだと思います」

 世の中の理想とされていることだけが“正”ではない。そう叫ぶようなゴッホの作品は、すべての人に生きる示唆を与えてくれている。実物からもらえる力をぜひ、体感してほしい。(フリーランス記者・中村千晶)

AERA 2019年12月16日号

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