人間関係コンサルタントの木村隆志さんは、そんな「お気持ち」を加速させるSNSの側面について、こう話す。

「第三者の目があるツイッターでは、お気持ちは相手の怒りに対して自分が冷静だという演出にもなる。すると、自分と相手だけでなく、周囲までもコントロールしようという心理が働く場合もあります。つまり、上から目線になりやすいのです」

 SNS上では冷静さを装っていても、感情はまるで風船のように膨らむばかり。拡散性の高いツイッターでは、こうした感情表現が、揚げ足を取りたい人たちのターゲットになりがちだ。そして互いに怒りや憎しみに変わる。

「短い文章では伝えたいことの2割も理解してもらえません。相手のテンションもわからずに“お気持ちのラリー”が続いてしまうこともあります。感情に訴えて拒絶することは、実は効果がないのです」(木村さん)

 千田教授は、ただ感情をぶつけていたわけではない。「ショックだ」とツイートした背景にも、理由があった。

「明らかに事実無根なことに抗議してツイートしましたが、今思えばきちんと『不当だ』と返したほうがよかったと思います。大学教授という立場で一般の方に論をふりかざすことは乱暴だと思ったのです」

 SNSならではといえる、見知らぬ人たちとのやりとり。すれ違うことすらなかった人と、つながることができるようになったからこそ、丁寧に接しようと心がける。一方で、その感情表現が、相手には「コントロールされている」ように受け止められる。ツイッターのような短い文字数だと、「つらい」「悲しい」などとつい使ってしまいがちだが、それこそが「人格否定にも見える乱暴な論法にもなりうる」と木村さんは指摘する。

 共感の「いいね」が押されるたびに距離がぐっと近づいたような気にもなる。だが、そのお気持ちは本物だろうか。SNS時代での共感は、数や感情には見えないところにもある。(編集部・福井しほ)

AERA 2019年12月16日号