日韓関係の冷え込みが報じられる一方、3度目の韓流ブームが起きている。AERA 2019年12月9日号では、韓国製品があふれるコリアタウンを歩き、その背景を探った。
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「私にとって韓国行きは、ふらっと実家に帰るみたいな感覚」
タレントの大島麻衣さん(32)は10年前から、多いときは月に1度は訪れるほどの韓国通だ。9月上旬、いつもの感覚で3泊4日で訪れた。週刊ポストが「韓国なんて要らない」と特集し、テレビのワイドショーでは「断韓」発言も出た時期だった。
「ホテルに向かうタクシーで、運転手さんに『大丈夫だった? この時期に来るのを両親とか心配しなかった?』って韓国語で話しかけられました。『いや全然。楽しんで行ってきてねって感じでした』と返したら、『いい家族だね』『よくこの時期に来てくれたね』と歓迎モードでした」
ツイッターに、韓国旅行の感想をアップした。「私は自分の目で見て、感じて確かめたいタイプなので今回韓国にきました」「感じたこと。やっぱり韓国が大好きだ!」と宣言、「#こんな時こそ思いやり」とタグを付けて投稿した。SNS上では賛否の反応が巻き起こった。否定的な意見に対して大島さんは、「あなたは嫌い。私は好き。それでよくないですか? どうしてみんなで嫌いにならなきゃいけないんですか?」と反論した。一連のツイートへの「いいね」は1万2500近くにまで上り、2600回近くリツイートされた。大島さんは言う。
「投稿前は厳しい意見が9対1で多いかなと思っていた。だからこそ闘ったんです。そんな(嫌韓の)人ばかりじゃないよという気持ちがあった。結果として私の体感では7対3で肯定的な意見が多かった。韓国の人と結婚しているという人からのダイレクトメッセージには、発信してくれてうれしかった、と。怖がらずに言ってくれてありがとう、というコメントももらいました。『みんな韓国好きじゃん』と思いました。大丈夫だよって言葉が聞きたかったのかな」
いま、第3次韓流ブームの真っただ中といわれている。「嫌韓本」が並ぶ書店しか知らない中高年は首をかしげるだろう。ブームは、若者を中心に特定の人にしか見えない独自ワールドで起きている。
11月下旬の平日夕方、コリアンタウンとして知られる東京都新宿区の新大久保を歩いた。街にいるのはほとんどが若い女性だ。白い肌にミニスカート、トップスはダボッとしたニットの「韓国っぽい」子もいれば、一般的な装いの子もいる。1枚60円の美容パックを置くコスメショップでは、体を傾けないとすれ違えないくらい客がいた。
昨年ごろから、JR新大久保駅では、土日に利用者が多いため、入場規制されることがあった。JR東日本が発表した2017年度の乗車人員上位100駅のなかで、前年度と比べた乗客数の伸び率は1位。中高生が修学旅行の自由行動の行き先に、渋谷や原宿と並んで、新大久保を選ぶようになったという。