スケートカナダでは4回転ジャンパーと対戦し、ロシア女子の脅威は体験済みだ。紀平もパワフルなトリプルアクセルを成功させ、79.89点をマーク。5.15点差でフリーに進んだ。
フリーは、紀平が4回転サルコーを跳ぶかに注目が集まった。9月に左足首を捻挫し練習を控えていたが、4回転ジャンパー、トルソワの活躍を見て10月に練習を再開。ショート前日の練習では成功させていた。
「本番直前、靴を履いた後に『確実にファイナルを狙おう。迷いがあるなら3回転でいこう』と、最後に判断しました」
もちろん4回転サルコーを抜いてもハイレベルな内容。見事に2本のトリプルアクセルを成功させ、シーズンベストとなる総合231.84点を記録した。
「アクセルは、スピード感や、ここにイメージを乗せて跳ぶという集中の仕方が、本番でできるようになってきました。両方ミスするかもしれないというくらい自分に重圧をかけながら集中するんです」
プレッシャーの中で跳ぶという新たな境地をみせた。
コストルナヤはトリプルアクセルを1本成功。技一つ一つの質の高さが評価され、総合240.00点で優勝を決めた。
紀平にとってスケートカナダとNHK杯の2戦は、ロシア女子の「4回転」と「技の質」と対決する経験になった。
「コストルナヤは、ジャンプの安定感があって加点もつきます。スケーティングもスピードも表現力も、彼女と比較したときに、まだまだ伸ばしたいところが出てきました。今回は4回転サルコーを入れられなかったので、しっかり練習します。GPファイナルは昨年の演技をしても優勝に届かないくらい厳しい戦いですが、1位を狙えるよう頑張ります」
(ライター・野口美恵)
※AERA 2019年12月9日号