全国各地のファンゾーンで盛り上がりを見せた今大会。開催都市だけに頼らない仕掛けが東京五輪でも求められる (c)朝日新聞社
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W杯後もラグビーを応援しよう!(AERA 2019年11月18日号より)

 日本列島を熱狂させたラグビーワールドカップが閉幕した。「最も素晴らしいW杯」と評されたこの成功を2020年にどうつなぐのか。AERA 2019年11月18日号に掲載された記事を紹介する。

【日本ラグビー、今後の注目イベントは?】

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 南アフリカが優勝を飾り、44日間の熱い戦いに幕が下りたラグビーワールドカップ(W杯)日本大会。ラグビーの伝統国以外で開かれた初めての大会は、日本代表の快進撃もあり、大きな盛り上がりを見せた。

 チケットは販売可能な席の99.3%にあたる184万枚が売れ、販売率はW杯の最高記録。台風19号で中止になった3試合を除く計45試合で約170万4千人が観戦した。全国12の開催都市の自治体が設置した計16会場の「ファンゾーン」にはW杯で過去最多の113万7千人が来場し、パブリックビューイングで大型スクリーンを見ながら、地元の特産品を堪能した。国際統括団体ワールドラグビー(WR)のビル・ボーモント会長は「記録破りの大会となった。おそらく最も素晴らしいW杯として記憶に残るだろう」と評した。

 来年には東京オリンピック・パラリンピックを控えるが、ラグビーW杯の経験をどう生かすことができるのか。大会成功のひとつの要因が柔軟な対応だ。

 大会4日目の9月23日、大会組織委員会は試合会場への食べ物の持ち込みを認めると発表した。当初はセキュリティー上の理由や試合会場の出店業者の販売権を保護する目的で持ち込みが禁止されていたが、売店に長蛇の列ができ、SNS上でも不満の声が上がっていた。

 これほどのビッグイベントでの方針変更は異例ともいえるが、臨機応変な対応ができた背景には、毎朝8時から開かれるミーティングの存在がある。出席メンバーは大会組織委員会とWRから計10人。開幕の約3週間前から、毎朝8時に集まり、ミーティングを開き、前日に持ち上がった課題が話し合われる。

 ミーティングの責任者で、組織委の鶴田友晴事務総長代理はこう振り返る。

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