「若者がジーンズ一辺倒だった時代はとっくの昔に終わった」(前出スズヤの青山さん)
若者にさまざまな選択肢がある中で、ジーンズは毎日のように着用するものではなくなり、結果的に「かつてほど売れなくなった」ようだ。
東京・代官山で、女子大学生(21)に話を聞いてみると、こんな答えが返ってきた。
「持っているジーンズは1本。月に何度かはいています。動きやすいので好きですよ」
そもそも洋服にあまりお金をかけられなくなっていることを示すデータもある。
総務省の統計によると、2人以上の世帯では、00年は男性用洋服にかけた1年間の費用が平均2万5040円、女性用洋服が4万4517円だったのに対して、18年には男性が1万7458円、女性が3万603円と、それぞれ約3割ほど減っている。加えて、今は人口が減っている。「昔は作れば作っただけ売れた」(浅野さん)というジーンズが、再びかつてのように売れることはあるのだろうか。
ジーンズ復権のきっかけの一つとして青山さんが挙げたのは、IT業界などを中心にした服装のカジュアル化だ。イッセイミヤケの黒いタートルネックにリーバイスのジーンズをはいたアップル創始者のスティーブ・ジョブズの姿を覚えている人も多いだろう。
カジュアル化は、IT業界以外にも波及しつつある。
パナソニックは昨年4月に工場などをのぞいた職場で服装を自由化し、少しずつ対象の職場を広げているという。伊藤忠商事もジーンズなどで出勤しても構わない「脱スーツ・デー」の取り組みを始め、TPOに合わせてではあるが、現在は火曜~金曜の週4日は「脱スーツ」が認められている。
ユニクロが20~50代の男女1千人を対象に17年に行ったビジネスシーンでのジーンズに関する意識調査でも、47.3%が職場にジーンズで出社したいと考え、75.6%が職場でジーンズをはいても構わないと考えているという結果が出た。
ビジネスシーンでのジーンズ着用に業界は「大いに期待している」(浅野さん)。加えて、前出の松島さんは「もしかしたら」と考えることが一つある。
今、松島さんら団塊ジュニア世代の家庭では、中高生くらいの子どもがいるケースが多い。「僕らの世代ってジーンズ好きがたくさんいる。興味を持ち始める年頃の子どもたちにジーンズのうんちくや格好良さを教えてあげれば、ちょっとしたブームの可能性だってあると思います」
(編集部・小田健司)
※AERA 2019年11月11日号