だが、売れ方をみると現在は少し事情が違うようだ。前出の「スズヤ」での話はこの店に限ったことではない。
ベストジーニスト賞を主催する日本ジーンズ協議会(本部・岡山県)が行った調査によると、国内のブルージーンズと、青以外のカラージーンズを合計した販売数は、2000年ごろには約7千万点前後で推移していた。しかし徐々に減少傾向にあり、10年には4千万点を割り込んでいる。調査はすでに行われていないが、18年の推計値では5千万点前後とみられるという。いずれにしても、かつてのジーンズ黄金期から比べると、大きな落ち込みだ。中年以上の女性向けと子ども向けは比較的安定しているが、それ以外の消費が低迷しているようだ。
調査は、エドウインをはじめとした協議会の会員企業からの情報に加えて、ユニクロ、無印良品などの非会員の企業の販売数を推計している。イタリアの「ディーゼル」や「リプレイ」、オランダの「デンハム」などの一部の外国製品は除外しているが、協議会の浅野友城専務理事(72)によると「価格が高いこれらのジーンズは全体の数字に大きく影響するほどの売れ方はしていない」という。国産ジーンズに代わって、統計に入らない外国製の高級ジーンズが売れているわけではないようだ。
なぜ売れなくなったのか。
ジーンズ業界に詳しいえい(木へんに「世」)出版社の常務、松島睦さん(47)は国内ジーンズ市場をこう分析する。
「業界はいま、高いものと安いものの両極化と言われていて、中途半端な価格帯のものが以前ほど売れなくなった。業界の地図を変えたのはユニクロさんでしょう」
もともと国内メーカーがつくってきたジーンズは1万円以下の商品が主力だったという。
「それが、さらに安い価格でそうしたジーンズに匹敵するような品質のものをユニクロさんが提供し始めたことで、1万円以下のメーカーはかなり苦労してきた」(松島さん)
一方で、1本5万円以上もするような、職人がつくった国内産の高級ジーンズも売れている。その結果、かつて「ナショナルブランド」と呼ばれた国内メーカーの多くは苦戦を強いられているというわけだ。
「特に若い女性の着用率が落ちていることが、業界では指摘されています」(浅野さん)