首都圏を中心に12の校舎を持つ早稲田塾は、難関国公立大学や私立大学の総合型選抜・学校推薦型選抜合格者を数多く輩出してきた。

 早稲田塾では経済・IT・メディアなど各分野で活躍する大学教授や有識者を招いた「未来発見プログラム」を開催。探究活動のテーマ決めに悩む高校生に向けた「『課外活動』まとめサイト」(「探究 課外活動」で検索するとヒットする)を開設するなど、幅広い観点から進路選びのヒントとなる場を提供している。

■一方的選抜から意思疎通の場へ

 2月7日、早稲田塾自由が丘校で開かれた「総合型・学校推薦型選抜特別指導」を見学した。授業といっても、いわゆる板書形式ではなく、受講生によるプレゼンテーションが中心だ。3~4人ずつのグループに分かれ、各自が取り組む探究学習の概要について、1人3分で発表。その後、メンバーどうしで感じたことや質問を交換する。

 受講生が意見を述べる際は「お互いの研究をさらにユニークなものにする」という姿勢で臨むことが原則だ。知的財産権の制度についての発表では「常識を疑っていておもしろい」、海外の子ども兵をテーマとした発表には「現地民の視点も交えればさらに研究が深まるのではないか」といったコメントが飛び交った。

 早稲田塾の中川敏和・執行役員は言う。

「通常の授業は講師があらかじめ正解を持っていて、それを生徒側に答えさせるイメージが強いと思います。一方、探究学習を進めていくよりどころになる『視点』は、本来、生徒側が持っているものです。私たちの役目は、議論や発表を通じて生徒自身に気づきを促すことにあります」

 探究学習の視点を活用した入試制度は、さらに増えていくのだろうか。学校の探究活動導入に詳しい、ベネッセコーポレーションの小村俊平・教育イノベーションセンター長はこう指摘する。

受験生の数が多かった時代は、入試は大学が生徒を選ぶためのものでした。しかし受験人口の減少が進む現在、大学入試は大学と生徒が互いの相性を確かめ合う場に変容しつつあります。探究学習入試を導入することで大学はアドミッションポリシーに適する生徒を受け入れやすくなる。生徒からしても、入学後にやりたいことができるかをあらかじめ確認した上で入学ができる。大学と生徒の双方にメリットがあり、今後もさらに浸透が進んでいくと思います」

 一方的な選抜から、大学と生徒の双方向的な意思疎通の場へ。大学と受験生の関係は、大きな転換点を迎えている。(本誌・松岡瑛理)

週刊朝日  2023年3月3日号

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