大学は資産運用の強化や学生確保など多くの課題に追われている。それらを支える存在として、職員の奮闘や卒業生の協力が欠かせない。AERA 2019年10月21日号に掲載された記事を紹介する。
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資産運用に運用会社を使う大学もある中、慶應義塾大学は自前で運用している。高橋郁夫常任理事(61)はこう語る。
「慶應の卒業生には金融機関に勤めているプロが大勢いますので、まかせればという声もありますが、失敗した際の責任を取るのは我々です。であれば、専門家の声も適宜聞き入れながら、自分たちでやった方が安心という考えです」
学費収入が一定あるため、高リスクの運用よりも安定的な利回りを得ることを重視し、最適な分散投資をしているという。実務を統括する栗林武郎経理部長(49)はこう言う。
「資産運用というと収入の話が中心になりがちですが、目的・使途をいかに明確にできるかが大事です。悪い時でもきちんと説明できる体制があれば怖いことはないと思います」
慶應はこの4年ほど、30億円以上の安定的な運用収入が入っているという。
国からの補助金が減少傾向にある中、運用収入とともに寄付金は今まで以上に貴重な収入源になっている。そのため校友との連携も大学経営にとって大きな課題だ。早稲田大学の校友組織は慶應に比べると弱いと言われてきたが、創立150周年を見据えた中長期計画「Waseda Vision 150」の中に校友会の活性化が盛り込まれた。三木省吾総長室校友課長兼校友会事務局長(49)はこう語る。
「早稲田の校友の特徴は、寄付だけではなくたくさんの汗もかいてくれるところです」
例えば遠州稲門会(静岡県西部)では自主的に進学相談会を開催するなど「我々がむしろひっぱられるような形」(三木課長)。早稲田ファン発掘のため応援部や合唱団、ジャズバンドが地方を回り、進学交流会も実施する「演奏旅行」も、各地域の校友の支えで成立している。
「こうした活動の結果、早稲田ファンになった子どもたちが将来入学してくれれば嬉しいし、そうじゃなくても早稲田スポーツ等のサポーターになってくれればありがたい。教職員だけではできない部分を校友が担ってくれています」
同課の渡部美紗さんも言う。
「人生の楽しみが、早稲田に入るとずっと続く。離れる時期はあるが、64万人が関わりたい時にサードプレースとして関わる校友会だったらいいと思います」
(編集部・小柳暁子)
※AERA 2019年10月21日号より抜粋