定期的にライヴ活動を行い、マイペースとはいえコンスタントに作品を発表し続けているのを当たり前だと思ってはいけない。今日発売のスピッツのニュー・アルバム「見っけ」を繰り返し聴きながら、改めてそう強く心に誓う。でも一方で、優れたポップ・ミュージックは元来、こうして日常生活にさりげなく寄り添っているものだという真理をも思う。
もちろん、素晴らしいアルバムではある。だが、決して特殊なものなどではなく、それがアートかどうかといったナンセンスな議論なども寄せ付けない、ごくごく自然にささやかな毎日を豊かにしてくれるもの。それこそが大衆文化であることを、スピッツの存在はいつもおしえてくれる。
「見っけ」のジャケットには、スピッツのヴォーカリストでソングライターの草野マサムネの若き日を思い出す少年のような女性――劇団「モダンスイマーズ」所属の俳優、生越(おごし)千晴――の写真が使われている。本がたくさん並ぶ部屋で、「ミノムシ」を模した小さな生き物を“見っけ”た瞬間の表情を捉えた、とても象徴的なカットだ。
その「ミノムシ」はカラフルな短冊のような布でできた蓑を背負っていて、一見するととても重たそうだ。だが、筆者には、長く積み重ねられた歴史や様々な業(ごう)でできている蓑をまとったポップ・ミュージックそのもののように思えてならない。
そう、言われてみないとなかなかそこにあると気づきにくい優れた大衆文化としてのポップ・ミュージック。それをふと“見っけ”ることの意味を、このアルバムは伝えているのではないかと。
アルバムにはNHK連続テレビ小説100作目の記念的作品だった「なつぞら」の主題歌「優しいあの子」を含む12曲を収録。いずれも開放的なメロディーと、抜けのいい音質の歌の上で、シャープなロック・サウンドとして仕上げられた、スピッツ真骨頂と言える曲がそろっている。
特に象徴的なのが、シンセサイザー音とギター・フレーズが絡みながらダイナミックに展開されるタイトル曲でありアルバム1曲目を飾る「見っけ」だ。スピッツのある種の意思表明のような手応えを感じさせる「見っけ」にはこんな歌詞が出てくる。