「実現可能な内容であるか、継続性があるかの2点で疑問をもち、これまで慎重な審査をしてきた。残念ながら申請のあった内容通りの展示会は実現できておらず、補助金適正化法などを根拠に交付を見送った」

 また、愛知県の大村秀章知事が慰安婦を表現した少女像などの作品展示「表現の不自由展・その後」について、批判や抗議が殺到して展示継続が難しくなる可能性を把握していながら、文化庁に報告しなかったことも問題視した。

「愛知県側では4月の段階で、会場が混乱するのではと警察当局と相談していたらしいが、文化庁にはその内容が来ていなかった。少なくとも各方面に相談した段階で、申請先の文化庁にも相談すべきではなかったか」

 その上で、一連の決定が「検閲にあたるのでは?」という質問にこう言い切った。

「中身について文化庁は全く関与しておらず、検閲にはあたらない」

 つまり、この補助金不交付の決定はあくまで「手続き」の問題であり、慰安婦などを題材にした作品の展示とは無関係だというのだ。

 文化庁が不交付を決めたのは9月26日。この前日、大村知事が「表現の不自由展・その後」の再開を発表する方向で調整しているという情報が文化庁に伝わったとされる。タイミングは偶然なのか。

 大村知事は「補助金を不交付にする合理的な理由がない」として、行政訴訟に打って出る構えだ。

「安倍─萩生田ライン」による不交付決定に、野党は国会での対決姿勢を強めている。

 立憲民主党の枝野幸男代表はさいたま市での講演で、文化庁をこう批判した。

「『展示の中身が気に食わないから金を出さない』ということを認めれば、萎縮効果が働き、お上に都合の悪い文化事業は行われなくなる。文化庁が自分たちの判断で表現を萎縮させたのならば、自殺行為であり、存在意義が無くなるので廃止したほうがいい」

 別の講演では、4日開幕の臨時国会が「『報道の自由、表現の自由』国会、『日本のエネルギー構造問題』国会になるかもしれない」と強調。補助金不交付と、かんぽ報道をめぐるNHK番組の続編見送り問題、関西電力の金品受領問題の三つを安倍政権を追及する「3点セット」と位置づける考えを示した。

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