この試合の最優秀選手に選ばれたフッカー(HO)の堀江翔太は、「(長谷川)慎さん(スクラムコーチ)が教えるスクラムをやれば押されないし、プレッシャーをかけられる自信があったので、想定内でした」
日本は、フォワード8人全員が一体となることで、8人分の力を漏らさないように練習を重ねてきた。日本はスクラム6本すべて成功し、後半18分には日本ボールのスクラムを起点に、ウィング(WTB)福岡堅樹の逆転トライも生まれた。
勇敢なタックルも随所に見られた。日本はボールを持った相手選手を2人がかりで止めるダブルタックルを仕掛け、アイルランドの攻撃を食い止めた。タックル数はアイルランドの147に対し、日本は171。成功率も日本は93%と、アイルランドの88%を上回った。
ディフェンスリーダーのプロップ(PR)稲垣啓太は勝因を聞かれてこう答えた。
「相手はフォワードを前面に打ち出していくチーム。前半はお互い削り合いみたいな部分がありましたけど、後半20分、アイルランドの足が止まってきた。日本は足を止めずにディフェンスのラインスピードを保ち続けたのが、そこがひとつの差だと思いますね」
なぜ走り続けることができたのか。
19タックルを決めたロック(LO)のトンプソン ルークは、日本選手たちがコンタクトプレーをこれほど高レベルで行えるようになった理由について、「(6月から7月にかけて行われた)宮崎の合宿でコンタクト練習をいっぱいやって自信を持ったから」と語る。「地獄の宮崎合宿」とも評された1カ月にわたる合宿などでフィジカルを強化してきた日本。フランカー(FL)の姫野和樹も「苦しかった分、こういう勝利という最高の形が返ってくると思うんで、苦しかったことも最高の思い出かなと思います」
前後半80分をすぎ、試合終了を告げるホーンがスタジアムに鳴り響いた。7点差を追うアイルランドは、ラストプレーで引き分けにつながるトライを取りにいかず、大きなキックをタッチラインの外に蹴り出し、試合を終わらせた。プレーを継続させて引き分けを目指すよりも、日本の追加点の可能性を防いで7点以内で負けた際にもらえる「勝ち点1」を選んだのだ。優勝候補の強豪が、日本に完敗を認めた瞬間だった。
アイルランドの選手たちは試合後、花道を作って日本代表に拍手を送った。
(編集部・深澤友紀)
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