だが、安心するなかれ。企業が求める氷河期人材になるにも、必要な能力はある。はんこを押すだけの人材は無用だ。
「ミドル層のマネジメントスキルはどの業界でも汎用性があります。今、企業が求めているのはプレイングマネジャーになれる管理職です。現場の最前線を理解して、フットワーク軽く部下を巻き込んでいける人材は希少価値が高い」(前出の天野事業部長)
およそ10年前、裁量権をもたない「名ばかり管理職」が問題になったが、今や管理しながらプレーヤーとしても活躍する「動ける管理職」に移り変わり、求められるのも動ける大人、だ。
とはいえ、プレイングマネジャーとひと言で言っても、どこでどんな仕事をしてきたのかで、駒の進め先も変わってくる。「doda」の大浦編集長は、転職市場を時代ごとに、こう見ている。
「昭和がキャリアの時代、平成がスキルの時代だとすれば、今はキャリアとスキルを複数組み合わせる時代になっています。キャリアの時代、人事には人事経験者が登用されることがほとんどだった。ですが、営業であっても取引先や知り合いをスカウトした実績があるとか、成果を出した部下にはお菓子などのプチインセンティブをあげてやる気を向上させたとか、そういったスキルを抽出することで人事に就くこともできる時代です」
人事と営業のスキルの掛け合わせがさらなるスキルアップにつながるだけでなく、企業が求めるのも、その幅広い視点と経験の持ち主だ。
では、すべての職種でスキル転換や掛け合わせは可能なのだろうか。まずは、業界別の転職状況を見てみよう。
アエラでは、エン・ジャパンが運営する「エンエージェント」の協力を得て、異業種からの転職者が多い6業種を選び、その実態を調査した。転職者の実数が異なるので、それぞれの業界ごとに割合を抽出した。
転職者のなかで、異業種出身者が断トツで多いのがコンサルティング業界だ。転職者の出身業界もIT、サービス、商社、メーカー(機械・電気・電子)と幅広いことがわかる。大手コンサル会社のアクセンチュアでも、自動車メーカーや総合商社、クリエーター出身者などが活躍する。「コンサル=左脳派というイメージを払拭したい」と同社広報担当者。さらに、人事・戦略コンサルタントで『「いつでも転職できる」を武器にする』の著者でもある松本利明さんは、こんな傾向も指摘する。