異業界×異職種 またぎ転職は50代で増える(AERA 2019年9月30日号より)
異業界×異職種 またぎ転職は50代で増える(AERA 2019年9月30日号より)
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異業種からの転職者が多い人気業種(AERA 2019年9月30日号より)
異業種からの転職者が多い人気業種(AERA 2019年9月30日号より)

 異業界・異業種の人材を積極的に中途採用する企業が増えている。今、企業が求めている人材とは。AERA 2019年9月30日号(9月21日発売)に掲載された特集「転職の新常識」から、注目を集める人物像を解説する。

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 終身雇用の崩壊がうたわれ、一つの会社に勤めあげるというキャリアモデルも薄れつつある。

 リクルートキャリアの転職支援サービス「リクルートエージェント」の調査では、転職者の34%が異業界×異職種に転職している。また、異業界×同職種の組み合わせでも33.4%と、転職者の7割弱が業界や職種を変えているのだ。さらに、30代から40代までは業界のみを変える転職者が多いのに対し、50代以降になると、業界と業種の両方を転換する人が急増する。年代によって求められるスキルが違うことが理由の一つだ。同社HR統括編集長の藤井薫さんは言う。

「企業が30~40代の人に求めるのは、営業力や編集力のような職種にまつわるスキルです。一方、50歳を過ぎると、どの職種においても転換できる能力を意味するポータブルスキルを重視するようになります」

 かつては「35歳限界説」とささやかれた転職市場。時代が変わって「今がチャンス」なのが、金融不安やITバブル崩壊などで雇用が冷え込んだ就職氷河期世代と呼ばれる、90年代半ばから00年代前半に大学を卒業した大人たちだ。

 エン・ジャパンが運営する「ミドルの転職」の天野博文事業部長は、こう分析する。

「当時、採用を抑制していたため、その世代の人材が薄くなっている。つまり、求められている世代なのです。ちょうど40代前半で脂がのった管理職として期待できる人材を欲している企業も多い」

 大手総合商社の双日も、異業界からのキャリア採用に力を入れている。転職者の経歴も、メーカー、エンジニアリング会社、コンサルと幅広い。直近3年間で採用した転職者の実に9割以上が異業界出身者だという。同社人事部の森田順子さんは言う。

「就職氷河期に加え、過去には経営統合もありました。30~40代を中心に、業界を問わず様々な経歴の方を積極的にキャリア採用しています」

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