「そのままやっていたら出ますし。負けるぐらいだったら辞めろって思ってるんで。無様な姿は絶対見せたくないので。やっぱり、それ(北京五輪)までやってるんだったら多分4回転半を目指しながら、全種4回転を目指しながらやっていると思います。今もその気持ちで練習はしています。明言はできないですけど、常に強い自分でありつつ、その先にそれ(北京五輪)があったら。自分の中では競技生活の延長線上にあるくらい」
そのモチベーションになっているのが、何度も口にした「世界初の4回転半」への挑戦。
「今は本当に4回転半をやるためにスケートやってるなって思う。そのために生きてるなって思います。やっぱり、自分の体だからこそできるジャンプ。自分の演技の中だからこそ見えるジャンプというものを追求しながら、高難度を目指してやっていきたい」
練習でも成功していないが、それこそが羽生の闘争心に火をつける。
「まだ成長できる余地があるなとすごい感じながら練習している。一時期、厳しいなって思った時もあったんですけど、アクセルの壁があまりに分厚かったので。意外とできそうだなってなってきている」
合同取材の終盤、羽生は「別に全然引退しないですからね、まだ」と笑いながら報道陣に言った。幼い頃に描いていた自身の未来は、平昌五輪で金メダルを獲得してプロに転向することだった。今は違う。
「あまりにも、いろんな方々に支えられすぎている。支えてくれている方々の期待に応えられる演技をしたいという思いが強い」
4回転半も含めた完璧なプログラムを演じて恩返しをする──。取材後の去り際、羽生はこう言い切った。
「本当にきれいなの(4回転半)を跳んでやるからな。見とけ、世界!」
昨季、世界選手権で米国のネーサン・チェン(20)に負け、勝負への執着心も増す。今季も羽生結弦から目が離せない。
※AERA 2019年9月30日号