問題が山積している大学入学共通テストの英語民間試験。全国高校長協会の7割が「延期」を求めている。だが、英検の予約も始まった。大きな問題の一つに、現在の高校3年生に対する配慮不足がある。AERA 2019年9月30日号の掲載記事を紹介する。
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「現役合格を目指し、全力を尽くしている高校3年生に『浪人に備えて、英語民間試験のIDを作っておきましょう』なんて、とても言えません……」
公立進学校の英語教員(43)は、困惑気味にそう語った。
大学入試は、現在の高校2年生が受験する2020年度から、現行のセンター試験から大学入学共通テストに変わる。英語の大きな変更点は、英検やGTECなど民間の検定試験を使い「読む・聞く・話す・書く」の4技能を測ること。高3の4~12月の間に2回まで受験でき、成績は大学入試センターから各大学に送られる。そのために必要なのが「共通ID」の取得だ。
高校2年生のIDは11月に学校がとりまとめて申し込む。ところが現在の高校3年生も浪人した場合には必要になり、浪人するかどうかわからないうちに申し込まないといけないのだ。申し込み方法は、学校経由と個人の2通りあり、学校が扱うかどうかは各校の判断に委ねられている。学校が申し込む場合は12月で、手続きが完了すると大学入試センターからIDの通知はがきが届く。前出の教員はため息をつく。
「高校3年生にそのはがきが届くのは2月。合否の不安と闘っている最中に、浪人前提の通知が届くなんて……」
関西地方に住む、高3の娘を持つ女性(50)は少し前に、学校が一括申し込みをすることを知り胸をなでおろした。制度があまりにも複雑だからだ。
「ID申込案内も見ましたが、90ページ以上あり読む気がうせました。高校生が自力で手続きするのは難しいと思います」
現在の高校3年生がIDを取得せず浪人した場合、1月下旬からの追加期間に申し込むことも可能だ。しかし送付まで「原則30日以内」。仮に3月下旬に申し込むと、IDが手元に届くのは最も遅いと4月下旬。