「すでに民間試験は始まっていて、受験できる試験の選択肢が狭まるリスクがある。それもあって学校一括申し込みにした」

 そう語るのは進路指導の担当教員(58)だ。高3には「IDは保険」と説明したという。

「浪人するかどうかわからないけれど、保険だと思ってとっておこう。無料だし。だれだって保険を申し込むときには、入院や事故にあうことは想定していない。使わないのが保険だ」

 さらに、高3の問題はID申請にとどまらない。今月10日、全国高等学校長協会は民間試験の延期および制度の見直しを求める要望書を文部科学省に提出。「高3への配慮不足」も問題視した。同協会長の都立西高校・萩原聡校長(58)は言う。

「来年2月から申し込みを開始する事業者もいますが、高3は入試の真っただ中。対応は難しく、合否の結果も出ていません。3月下旬に浪人が確定してから申し込む場合、4月から希望の日時、場所で受験できるのか。各試験の詳細がいまだわからず問題が多い」

 同協会のアンケートでは、民間試験の実施を約7割が「延期すべき」と答えている。これに対し、萩生田光一文科相は「不安解消に努める」の一点張りだ。英検の有料予約も始まった。4月の実施まで半年余。最大の不安は制度不備のままの民間試験強行だ。(編集部・石田かおる)

AERA 2019年9月30日号

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