小島さんのミニチュアは国内外のSNSなどで話題に。著書『時が止まった部屋 遺品整理人がミニチュアで伝える孤独死のはなし』(原書房)を8月に刊行(撮影/篠塚ようこ)
小島さんのミニチュアは国内外のSNSなどで話題に。著書『時が止まった部屋 遺品整理人がミニチュアで伝える孤独死のはなし』(原書房)を8月に刊行(撮影/篠塚ようこ)
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 日本では孤独死する人が年間約3万人。その現場を精巧に再現したミニチュアがある。なぜつくるのか、なぜこの仕事を続けるのか。制作者の女性が思いを語った。AERA 2019年9月23日号に掲載された記事を紹介する。

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 部屋からあふれそうなゴミの山、飼い主を亡くして残されたペット、畳に染み込んだ体液……。精巧に作られたミニチュアは、目を背けたくなるような現場を表現しているのに、そのリアリティーから目が離せない。

 ミニチュアの作者は小島美羽(みゆ)さん(27)。遺品整理と特殊清掃の仕事をしながら、空いた時間に制作を続けている。ミニチュア制作は全くの独学。YouTubeなどを見てスキルを学んだ。

 はじめは、毎年夏に開催される葬祭業界の展示会「エンディング産業展」の制作だった。それまでは写真を展示していたが、見る人に与えるショックが大きく、報道ではモザイクがかけられてしまう。「孤独死は自分にも起こり得ること」ということを伝えたいのに、伝わらない。ならばと思いついたのがミニチュアという手段だった。

 孤独死は、誰にも看取られずに自宅で亡くなり、発見されるまでに日数が経過した状態を指す。日本では年間約3万人が孤独死していると言われる。小島さんは年間370件ほど、遺品整理や特殊清掃を担当するが、そのうち4割が孤独死の現場だ。

 一つの現場には5~6人のチームで向かう。朝9時半から昼食を食べずに14時、15時まで。小島さんたちが作業する段階では遺体はない。床板や畳まで撤去し、漏れ出た体液や死臭を清掃する。害虫を駆除し、家具などを運び出す。どんな猛暑でも、防護服や防毒マスクで全身を覆い、近隣住民のために窓も開けずに作業する。

「遺体の体液に触れたハエが外に出てしまったら、どこかの家の洗濯物に触れてそれを赤ちゃんがしゃぶってしまうという危険も考えられます。だから窓は開けません。前に、結核で亡くなった人の部屋に知らずにマスクなしで入ったことがあって、死ぬかもと思った。体力的にも精神的にもすり減ります」

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