「あおり運転」殴打事件で、全く関係のない女性がネットでデマを流された。事件や災害が起こるたびに拡散するデマ。AERA 2019年9月16日号ではネット時代のデマの恐ろしさを掲載。問われるのは、一人ひとりのリテラシーだ。
* * *
<ガラケーBBA発見される>
<きったねー顔やな>
<コイツか、あおり運転の同乗者>
事実無根、誹謗中傷のこんな書き込みが女性のインスタグラムのコメント欄に殺到した。BBAとは「ババア」のこと。8月17日早朝のことだ。
茨城県の常磐自動車道で8月10日に起きた「あおり運転」殴打事件。大阪市の会社役員・宮崎文夫容疑者(43)が傷害容疑で逮捕されたが、ネット上では都内で会社を経営する冒頭の女性が、宮崎容疑者の車に同乗し「ガラケー」を手に現場の様子を撮影していた喜本奈津子容疑者(51)だという「デマ」が拡散された。
宮崎容疑者とは一度も面識がなかったという女性。それが喜本容疑者だとされたのは、・宮崎容疑者が女性のインスタグラムのアカウントをフォローしていた、・喜本容疑者の事件時の服装などが、女性がSNSにアップし自身が着用していたものと似ていた──などという薄弱な根拠からだった。
女性は17日朝には自身のフェイスブックで、<起きたら犯罪者扱いされててびっくりですが完全に事実と異なりますので無視してください>と投稿した。しかし、その日のうちに女性の名前が、ツイッター上で話題になっていることを示す「トレンド」に表示され、女性が経営する会社に嫌がらせの電話が殺到、業務に支障が出るまでになったという。女性の名前と写真は、今もネット上に残る。
女性は23日、都内で代理人弁護士とともに会見し被害を訴え、投稿者らの法的責任を追及する方針を明らかにし、「精神的に平常に戻れていない」と心境を語った。
女性の代理人弁護士を務める、インテグラル法律事務所(東京)の小沢一仁(かずひと)弁護士は言う。