■2019年と例年との比較

 文科省や全国医学部長病院長会議がデータを開示しないなら、自分でやるしかない。2013~18年の文部科学省のデータに、今年の合格率を追加して比較することにした。10校については文部科学省からのデータを参照した。それ以外の大学について文科省は調査を行っていない。「ハフィントンポスト」が独自に調査していたため、その記事を参照することにした。ハフィントンポストのデータと文部科学省のデータとは一致しないものがあった。若干の誤差は否定できず、あくまで参考値してご理解いただきたい。

 男性合格率/女性合格率を、今年と過去とで比較する散布図を作成した(図1)。X軸が過去、Y軸が今年の合格率比率である。1より大きくなると女性より男性の合格率が高い。X=1, Y=1に近いほど男女における合格率の差が少ない大学ということになる。

 最初の図では、今年と例年(2013~18年)の男性合格率/女性合格率の比を示している。全体的にX>1, Y>1の大学が多く、46校(57%)がそこに含まれている。これは前述したとおり、全体的に男性の合格率が女子の合格率よりも高い大学が多いということを示している。これについては後で述べる。

■合格率が女性優位に変化した大学

 この図の右下のX>1、Y<1の領域に含まれるのは、例年は男性優位だったが女性優位に変化した大学だ。この群の13校には女性差別を認めた東京医科大学、順天堂大学、北里大学、聖マリアンナ医科大学や、特定の者を優先させていた昭和大学や日本大学も含まれている。不正の指摘された大学の6割で、男女の合格率が急激な変化を示したことになる。

 縁故優先は認めたが、女性差別を認めなかった昭和大学や日本大学でも今年は女性優位となっている。昭和大学は例年が1.54だったのが今年は0.78、日本大学も例年は1.49だったのが今年は0.87だ。以前から女性差別をしていた可能性が高い。

 ほかには、筑波大学、金沢大学、鹿児島大学、福島県立医科大学、日本医科大学、東海大学、兵庫大学が名前を連ねている。彼らの言い分を聞きたい。

■男性合格率が高い大学群

 実は、このように変化した大学は一部だ。女性差別が発覚したにもかかわらず、多くの大学は男性優位を続けている。

 X>1, Y>1の第一象限に含まれる、一貫して男性優位の大学は46校である。別表は2016~18年の入試で男性優位だった大学のリストだ。のべ30校中、16校が国公立だ。男女差別は一部の私立大学だけの問題ではないのかもしれない。

 なぜ、こんな差が生じるのか。二つの可能性がある。

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