■受験生に対する影響について

 では、他の71大学はどうなっているだろう。文科省高等教育局大学振興課大学入試室に、「不正をした10大学以外の今年の合格者数のデータがあるか」尋ねた。

 回答は残念きわまりないものだった。

「昨年の入学者の男女別合格率の一覧は問題があったので作成したもので、毎年作っているものではない。今年は、不公正のあった10校に絞って公表している。文科省では公表する必要がないと判断した。今年度分は全国医学部長病院長会議で秋頃に公表予定と聞いている」(文科省高等教育局大学振興課大学入試室担当者)

 このような男女の合格率の差は他学部でも見られる傾向なのかを尋ねたが、「通常、医学部に限らず、男女差の有無についての調査はしておらず、同様に取り纏めもしていないため、不明」とのことであった。また海外の医学部入試についての情報も持ってはいなかった。

 全国医学部長病院長会議がデータを持っているとわかったので、事務局に問い合わせてみた。回答は「全国の大学の取り纏めもまだ終わってない。時間がかかるだろう。委員長が公表という言葉を使っていたのでおそらく公表するだろうが、委員会も理事会もまだ通しておらず、方向性も決まっていない」だった。

 どちらの対応も残念である。受験生への配慮を全く感じない。

 医学部入試の女性差別は、昨年、たまたま文科省の役人と東京医科大学との間に不正行為があったから発覚しただけで、氷山の一角である可能性が高い。文科省は不正があった10大学の追跡調査で事足りると判断したということなのだろうか。全国医学部長病院長会議は、自分たちの大学医学部を受験する学生に対して、今年の春の結果を秋になってから報告すれば十分と考えているのだろうか。

 私が受験生なら、女性差別をしている大学を受験したくない。女性である自分には不利だし、不正入試が行われるのは、そういう校風だからなので、問題は入試だけではないだろう。学びの場としての魅力を感じられない。

 入学者選抜の差別についての調査は、志望校の選択を左右する問題だ。旧知の予備校講師である藤井健志氏に聞いたところ、「最近の医学部志望の高校生は準備が早く、暫定的な志望校は高1、高2のうちに決まっている」という。大学ごとの特徴にあわせた試験対策をしたほうが効率がよいから当然だろう。さらに2021年から新テストが導入されるので、今年の浪人生は2020年でどこかに入らねばという焦りがあるらしい。それなのに今年の調査結果が秋に報告される。

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合格率が女性優位になった大学