この日は、そのうち第1期600戸の販売抽選会が実施された。ちなみにこの販売戸数は、首都圏で今年最多。東京中の業者が注目するイベントとなった。
結論から言えば、顧客は殺到した。不動産投資家や富裕層、さらに近隣のタワーマンション族たちである。注目すべきは、都心部にしては広めの部屋設計と抽選倍率だ。
600戸に対して1543組が応募し、「電話や当日不参加でもOK」という条件のもとで130組以上が詰めかけた。抽選にあたって、ガラガラポンで白玉が出る伝統的な抽選機を選んだのは、「これが一番納得を得られるから」と関係者はいう。
平均倍率は2.57倍。第1期販売で最も高い2億3千万円(152.1平米)の部屋は競争率が11倍、2億1960万円の部屋は9倍、最上階の18階にある1億3320万円(127.5平米)の一室は、なんと44倍。これはレインボーブリッジと東京湾を挟んで豊洲市場が見渡せる抜群の眺望を誇る部屋だ。東京タワーまで見える1億960万円の部屋(14階、78平米)は、最高倍率の71倍に達した。
2番目に高い2億1960万円の部屋を抽選で引き当てたのは、冒頭の中国人夫妻だ。Tシャツにジーンズの夫はまだ30代。流暢な日本語で妻が語る。
「今も近くのタワーマンションに住んでいるけど70平米しかなくて。当たった部屋は2倍の広さです。2億円は高いけど、周辺はもっと高いでしょう」
前述したアジア系の女性は、自分で住むのかという記者の質問に「イヤ」と首を振る。では、投資目的で?
「ダメ、ダメ」
そう残して去っていった。
選手村マンション販売の特徴の一つは、転売や投資目的で買おうとする経営者や富裕層が多いことだ。
筆者らが抽選当日、会場前でインタビューを試みたところ、大半は取材を拒否。が、中には堂々と複数の部屋を買ったことを認める人もいた。取材に応じた計13人の当選者のうち、少なくとも3人は投資目的だと話している。今年4月から始まったモデルルーム見学者に対する取材でも「投資目的」と答えた人が多かったことを考慮すると、実際には不動産業者を含んだ多くの人々が転売益や値上がりを期待して抽選に参加したとみられる。様子を見て値上がりするようなら転売し、投資含みで自宅を買う「半投半住」組と呼ばれる人たちも、かなり含まれていると思われる。