野口範子さん
野口範子さん

――野口さんのご専門は生命科学なんですよね?

 はい、そちらの研究もというか、そちらが本業で、30人の学部生や大学院生たちと目いっぱいやっていますよ。活性酸素が動脈硬化や糖尿病の発症に関わるメカニズムや脳の神経細胞死のメカニズムなどを探っています。私たちの細胞は酸化と還元がシーソーのようにバランスをとって機能していて、どちらに偏っても病気に繋がることがわかってきました。このメカニズムを明らかにして、人々の健康維持に役立ちたいと考えて研究を続けています。

――同志社大の教授になられたのは2005年ですね。

 最初は工学部教授でした。採用された年の12月に副学長から「新しい生命科学系の学部をつくるから会議に出て」と言われ、最初は気乗りしなかったのですが、「医学に寄った生命科学系をつくりたい」という話だった。私はもともと医学の勉強がしたかったので、「もしかすると私の思い通りの学部ができるかも」と思い始め、それから真面目に準備に取り組み、カリキュラム作りなどに2年費やして2008年に生命医科学部が誕生しました。

 サイエンスコミュニケーションのことも頭の隅にあったのですが、このときは余裕がなかったですね。ところが2011年に東日本大震災が起き、放射能の説明をめぐって日本中が混乱し、さらに2014年には私の専門分野に近いところでSTAP細胞事件が起きた。これはやらねばと一念発起して、東大で長年サイエンスコミュニケーションを教えてこられた生化学者の石浦章一先生に定年後に同志社に来ていただいて、副専攻としてスタートさせました。

 石浦先生の場合は、いくつかの学部から特別客員教授枠の一部をお借りして寄せ集めでつくったポジションだったんですよ。石浦先生のご貢献もあり、その後に学長裁量枠となりました。生命医科学部の他に文学部、社会学部、法学部、経済学部の学生が学部の壁を超えて一緒に学ぶ教育プログラムとしてSC副専攻が学長に認められたわけです。新年度から神学部も参画します。とにかく文系と理系の学生が共に学ぶということが私のコンセプトです。

――驚くべき実行力ですね。その実行力をどこで身につけられたのか……。

 さあ。小中学校時代はよく学級委員をやっていました。小学校のときに一度みんなから総スカンをくらったことがあって。きっと何か調子に乗って強引にやっていたんでしょうね。それですごく反省して、それからはみんながついてきてくれる学級委員になりました(笑)。

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