小島慶子(こじま・けいこ)/エッセイスト。1972年生まれ。東京大学大学院情報学環客員研究員。近著に『幸せな結婚』(新潮社)。対談集『さよなら!ハラスメント』(晶文社)が発売中
小島慶子(こじま・けいこ)/エッセイスト。1972年生まれ。東京大学大学院情報学環客員研究員。近著に『幸せな結婚』(新潮社)。対談集『さよなら!ハラスメント』(晶文社)が発売中
ホテルや航空会社など、接客靴にヒールの規定がある企業も。百貨店の靴売り場にならぶパンプス (c)朝日新聞社
ホテルや航空会社など、接客靴にヒールの規定がある企業も。百貨店の靴売り場にならぶパンプス (c)朝日新聞社

 タレントでエッセイストの小島慶子さんが「AERA」で連載する「幸複のススメ!」をお届けします。多くの原稿を抱え、夫と息子たちが住むオーストラリアと、仕事のある日本とを往復する小島さん。日々の暮らしの中から生まれる思いを綴ります。

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 1万8千人以上もの署名を集めた#KuTooが話題です。「女性にだけ苦痛な靴を強制するのは性差別である」という主張を聞いて、言われてみれば確かにおかしいと気づいた人も多いでしょう。

 共感が広がりメディアにも取り上げられる一方で、署名を集めた石川優実さんに対するバッシングもひどいものです。セクシーなグラビアの仕事をしていた女性が性差別なんか訴えるなという非難は的外れも甚だしい。ではどんな女性なら性差別を訴えていいのでしょう。「ヒール強制に賛成なのではなくて、提唱した人物に問題があるから批判しているのだ」とさも正当な行為であるかのようにツイートしている人もいますが、それはただのいじめ。石川さんが気に食わないなら、#KuToo叩きなんかせずに黙っていればいい。女性蔑視と職業差別を世直しのつもりで振りかざすのは実に醜悪で罪深いです。

 ハイヒールには、足の健康の問題だけでなく、災害時のリスクもあります。

 私は東日本大震災直後から折に触れて訴えているのですが、地震で交通機関が機能しなくなった際に歩きにくい靴での長距離の徒歩帰宅は二次被害を生みかねません。ハイヒールやミュール、サンダルなどで長距離を歩くのは無理。余震もある中、歩きにくい靴で足に痛みを抱えた状態では身を守れません。移動中に歩けなくなった女性が犯罪に巻き込まれる恐れもあります。たかが靴と侮れません。

 以前仕事で共演した舛添要一前都知事には直訴したのですが、大都市では災害用備蓄に靴下とスニーカーを大量に用意するべきだと思います。東京都の防災ホームページの備蓄品リストにはありません。現状はどうなのでしょうか。ヒールを履いた経験のある小池百合子知事なら、理解してくれるのでは。もしどなたか関係者がお読みでしたらぜひご提案を!

AERA 2019年7月1日号

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小島慶子

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小島慶子(こじま・けいこ)/エッセイスト。1972年生まれ。東京大学大学院情報学環客員研究員。近著に『幸せな結婚』(新潮社)。共著『足をどかしてくれませんか。』が発売中

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