小島慶子(こじま・けいこ)/エッセイスト。1972年生まれ。東京大学大学院情報学環客員研究員。近著に『幸せな結婚』(新潮社)。対談集『さよなら!ハラスメント』(晶文社)が発売中
小島慶子(こじま・けいこ)/エッセイスト。1972年生まれ。東京大学大学院情報学環客員研究員。近著に『幸せな結婚』(新潮社)。対談集『さよなら!ハラスメント』(晶文社)が発売中
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自閉症などの発達障害を正しく理解してもらおうと、国連世界自閉症啓発デーの4月2日夜、福岡県の飯塚市役所が青色にライトアップされた (c)朝日新聞社
自閉症などの発達障害を正しく理解してもらおうと、国連世界自閉症啓発デーの4月2日夜、福岡県の飯塚市役所が青色にライトアップされた (c)朝日新聞社

 タレントでエッセイストの小島慶子さんが「AERA」で連載する「幸複のススメ!」をお届けします。多くの原稿を抱え、夫と息子たちが住むオーストラリアと、仕事のある日本とを往復する小島さん。日々の暮らしの中から生まれる思いを綴ります。

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 昨年、軽度のADHD(注意欠如・多動症)であることを公表したら、思いがけなく大きな反響がありました。以前から家族や身近な仕事仲間には伝えていたので、公表したことによる周囲の動揺はありませんでしたが、中には私と話しているときに「ああ、やっぱりADHDだね」と言う人もいます。悪気はなくても言い方次第では、目の前でシャッターを下ろされたような気持ちになることも。

 一方、「自分もちょっとそうかもしれない」という人もいます。素人診断は禁物ですが、深刻な困りごとがないなら、一つの特徴として付き合っていくこともできます。同じようなことで困っている人がいたら助けようと考える契機にしてほしいです。

 ありがたいのは「実は私も」「私の家族も」と打ち明けてくれる人がたくさんいること。この人には安心して話せると思ってもらえることが、とてもうれしいです。そんな時は、公表してよかったと思います。打ち明けてくれた人とはしんどさをシェアすることも、笑えるあるある話をしたり、よい面を話し合って盛り上がることもあります。

 発達障害の他にも今注目されているひきこもりや不登校など、世間が押した負の烙印ゆえに、そうだと言い出せない人は多いでしょう。「話しても大丈夫だよ。仲間がいるよ」という空気を作ることが重要だとつくづく思います。また、一人を見て全体を判断しないことが大事ですね。

 発達障害は「ニューロダイバーシティー(脳神経の多様性)」と捉える見方もあります。多数派との違いを一律に欠陥とみなすのではなく、人間の多様さの表れと捉え、長所は伸ばし、必要な支援をする。言うほど簡単ではないですが、経済界ではすでにそのような取り組みは始まっています。人間の複雑さを知る上でも、発達障害は多くの気づきを与えてくれるのです。

AERA 2019年6月24日号