「副業を通じて会社という枠を超えた交流ができますし、本業ではすぐには仕事を振れない若手デザイナーとも仕事ができる。副業は人材発掘の場としても重宝しています」
会社が大々的に副業解禁を謳っても、公言するのはやはり難しい。
大手通信事業会社で総務を担当する男性(43)は、公言していないが、ある食品会社社長の右腕としても働いている。任されているのは「業務改善」の分野だ。
「本業では一貫して裁量権はありません。でも会社から一歩、外に出て、裁量権を得た立場で仕事をすると、こんなに自分は仕事ができる、誰かの役に立てる、と嬉しくなりました」
男性は、30代の部下が次々と転職して成功していく様子を見て、自分はやりたくて正社員をしているのか、能力がないからいつまでも正社員でいるのか正直、わからなくなっていた。だが、家族や収入のことを考えると転職は無理。そこで週8時間、リモートワークで働くことにした。すると、数カ月後には目に見える成果を達成し、社長からも感謝された。
実際に肩書の入った名刺を与えられているわけではない。けれども、自分には「2枚目の名刺」があると思えるだけで本業に対する士気は1年前とは比べ物にならない。形式はどうであれ、3枚目があってもいいかなと考え始めている。(編集部・中原一歩)
※AERA 2019年5月20日号