きれいな空気を吸いたい──中国国内の地方都市への洗肺旅行が13年ごろからブームに。プーケットやバリ島も洗肺旅行地として人気になり、爆買いブームの終焉とともに日本へも洗肺需要が押し寄せた。前出の根本さんは話す。

「団体旅行から個人旅行への転換期でもあり、定番ルートではなく、未知なる日本を目指そうという動きがあった。そこに洗肺需要も後押しし、日本の地方都市への旅行が拡大しました」

 中国の4連休初日の5月1日、搭乗率99.5%を記録した区間がある。上海発、佐賀空港行きのフライトだ。佐賀県観光課のインバウンド担当者は言う。

「中国人観光客は上海からの飛行機が佐賀空港に就航した12年は6020人でしたが、15年ごろから急増し、18年は5万8980人まで増えています」

 県内の嬉野や武雄などの温泉街が人気だという。昨年ごろから中国人旅行者のSNSに洗肺という言葉が目立ち始め、佐賀が洗肺スポットとして注目されていることに気が付いたという。

「中国の方は田園風景が残る佐賀県を桃源郷と呼びます。今夏は中国の有名なブロガーをホタルや棚田に案内し、佐賀県のさらなる魅力をアピールしていきたい」(先の担当者)

 洗肺を営業トークに使う動きも出てきている。博多湾に浮かぶ能古島の自然公園「のこのしまアイランドパーク」(福岡市)では、公式ツイッターの投稿に「#(ハッシュタグ)洗肺」を使用。広報担当の山崎浩昭さんは言う。

「海と花に囲まれた公園内で深々と深呼吸をしている中国人の姿はよく見ましたが、それが洗肺とは思いませんでした。眺めがよく、日本人のお客さんもよく深呼吸をしていますから」

 爆買いブーム時には注目されなかったが、免税店レジでの購入額(1~3月)が前年比126%と売り上げを伸ばす商品もある。たばこや排ガスによるせきやたんなどの症状を改善する漢方薬「ダスモック」(上写真)だ。インバウンドの売り上げの8割は中国人が占めている。

「中国人になじみ深い漢方薬である上、パッケージの肺を開いたイラストが、きれいな空気を求める中国の方にストレートに伝わったのかもしれません」

 販売元の小林製薬の広報担当者は分析した。(編集部・澤田晃宏)

AERA 2019年5月16日号

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