近重:そうあってほしいと思った人は、多いのではないでしょうか。

山下:次の御代替わりの時は、平成から令和への御代替わりを経験した人がたくさんいるでしょうから、「次もそうすべきだ」と考えると思います。3年前は、ここまで盛り上がるとは予測がつきませんでした。上皇陛下がおことばを述べられ、その思いが国民感情を動かし、結果として国民感情が政治も動かしたということだと思います。

──即位された新しい天皇陛下の印象はいかがでしたか?

久能:「即位後朝見の儀」の際の天皇陛下の落ち着いたご様子に、私は本当に感動したんです。滑舌もしっかりして聞きやすく、すばらしかった。天皇陛下の立派なお姿をご覧になって上皇、上皇后両陛下は喜んでいらっしゃると思います。

近重:16年8月のおことばから3年近くたってのご即位ですので、お心もお考えも準備がおできになっていると感じました。その自信が、令和元年の最初の日から感じ取れました。ご年齢も上皇陛下が即位された55歳より4歳年上でいらっしゃる。

──皇后陛下も晴れやかな表情でした。

久能:一般参賀に伺った際、印象的だったのが、いろいろなところから「雅子さま」「皇后さま」という声が聞こえてきたことです。ご回復を喜んでいる人が本当に多かった。雅子さまはこれまで長く、ご病気と向き合われてきた。「大変なことを乗り越えてくださった」という共感が生まれている気がします。民間から皇室に入られてすべて順調に進んでいれば、これほどの人気は出なかったのでは。

近重:民間から皇室に入られた上皇后陛下も、若いころは古いしきたりの中で、おつらいことがたくさんありました。上皇陛下のご理解はもちろんですが、お心の支えのひとつは、国民の人気と共感だったように感じています。

──今後どのような天皇になっていくのでしょう。

久能:上皇陛下と上皇后陛下のお姿を見てこられたので、基本は変わらないと思います。ただ、上皇陛下は今年2月の天皇在位30年の記念式典で、「象徴天皇を模索する道は果てしなく遠く」とおっしゃられています。平成の時代には、上皇さまご夫妻が続けてこられた慰霊の旅がありました。災害の多い日本で被災者にも寄り添ってこられた。これからどんなご公務に臨まれるかは、新天皇陛下が象徴天皇をどう解釈していかれるかということでしょう。

次のページ